2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大道珠貴「傷口にはウォッカ」

ひとことで言うと、何だかヘンな小説だ。 まあ、よくも悪くも大道珠貴。 フワフワした感じだけど、どっかなまぐさい主人公に、 つかみどころのないストーリー。 最初から最後まで、不思議な感覚に包まれたまま、何となく進んでいく。 もちろん、僕がそう感じ…

吾妻ひでおの壮絶「失踪日記」

大収穫をこころに刻み、京都から帰ると、アマゾンで購入した 吾妻ひでお「失踪日記」が到着していた。 朝日の書評で読んで、即注文したやつだ。 吾妻ひでおというと、黄金時代の少年チャンピオン、だろうか。 ただ、売れっ子作家時代、の吾妻ひでおには、僕…

早過ぎるさくら見物に出向く。

開花情報はまだつぼみと咲き始め、ぐらいだけど、まあよしとする。 まずは腹ごしらえと、 六本木ヒルズにもある「TO−FU CAFE FUJINO」北野店でランチする。 実はお初。ヒルズでは都合100回は前を素通りし続けてた。 ランチプレートや、昼御…

ロバート・B.パーカー「ダブルプレー (ハヤカワ・ノヴェルズ)」

私立探偵スペンサーを描いたシリーズが有名な作家だが、こちらは別。 初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンを題材に描いた小説だ。 アフリカ系米国人、と表記すべきなのは承知だが、一応小説の通りに書く。 ニグロ・リーグと大リーグが分立して…

西原理恵子「毎日かあさん2 お入学編」

2巻が出ていたとは知らなんだ。 天満橋のジュンク堂書店で見つけ、狂喜する。 喜びすぎ? いや、サイバラ好きなもんで… 西原理恵子作品といえば、大別してふたつのカテゴリーに分けられるだろう。 女性漫画家による、捨て身アプローチのパイオニアともなっ…

くしカツ満喫、新世界紀行

そんな映画の前に、行ってきました通天閣&新世界。 とにかく、すごいとしかいいようがない。 昭和にタイムスリップ、というか、時がもう流れていない感覚。 悪くいえば、流れが澱んじゃって…、みたいな。 うまくいえないが、日本のベタな原風景を見てしまっ…

天王寺アポロシネマ・プラス1で「エターナル・サンシャイン」

原題は〝Eternal Sunshine of the Spotless Mind〟 直訳すると「無垢のこころを照らす、不滅の太陽」? 英国の詩人アレクサンダー・ポープの詩の引用だという。 「真の幸福は罪なき者に宿る。忘却は許すこと。 太陽の光に導かれ、無垢な祈りは神に受け入れら…

ロマンかき立てる「灰色の北壁」

真保裕一「灰色の北壁」 「ホワイトアウト (新潮文庫)」の著者による、山岳もの短編集だ。 自らクレタ島の山に挑んだ紀行もの「クレタ、神々の山へ」の興奮を、 再び物語の世界にぶつけたかのような、作者の熱い想いが伝わってくる。 ホワイトアウトのような…

アリステア・マクラウド「彼方なる歌に耳を澄ませよ (新潮クレスト・ブックス)」

「冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)」「灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)」のマクラウド唯一の長編だそうだ。 でも、マクラウドならではのテイストは、物語を通して脈々と感じられる。 一編一編、新たに物語の設定やその世界を頭の中で想像する…

こうの史代「夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)」

待ち合わせの前に寄った書店で見かけ、購入する。 何度か書評や書店店頭などで目にして、気にはなっていた。 しかし、こころの準備というモノがあるので、 どうしようかな、と迷っていた。結局、何となく買ってしまって、 何となく読み始めてるんだから、何…

松尾由美「雨恋」

「本の雑誌」など各書評で評判を呼んでいる新作だ。 本の雑誌の書評には滅法弱い僕だから、 即買いの即読み、それも一気読みだ。仕事いつしてるんだ→自分。 マンションに住む叔母の留守を預かることになった〝ぼく〟は、 叔母の飼うネコたちの世話を押しつけ…

奥泉光「グランド・ミステリー〈上〉 (角川文庫)」「グランド・ミステリー〈下〉 (角川文庫)」

1998年の「このミステリーがすごい」国内7位。 以前から読もうかな、と思いつつ、長らく積ん読だった作品だ。 文庫の背表紙には 〝戦争小説、ミステリー、恋愛小説、そして… 日本が生んだ、ジャンルミックス小説の大傑作〟とある。 もう、ある程度評価…

敷島シネポップで「ナショナル・トレジャー」

もっと無思考ドカンドカン・アクション系かと思っていたが、 けっこう頑張って正統派のトレジャーハンターものやってる。 テンプル騎士団から、アメリカ建国の祖に渡った秘宝を 探そうって言うんだから、そこらへんを突いちゃったり、 細かいストーリーの破…

なんば千日前・敷島シネポップで「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」

初日だっていうのに、けっこう空席目立つ。 こういうノリの映画、大阪では、ウケが悪いのかな? 原題は〝BRIDGET JONES: THE EDGE OF REASON 〟 もう、日記の体裁は取っていない。 まあ前作も原作ほど日記の体裁は取っていなかったが、 あのうまい感じに共感…

山本一力「銭売り賽蔵」

一両小判や一分金、二朱金などの金貨や、 丁銀、豆板銀などの銀貨と、普段遣いの文銭との両替を行う 〝銭売り〟を営む賽蔵のサクセスストーリーだ。 初めて聞く職業だったのだが、これがなかなか興味深い。 「損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)」の損料屋同様…

浅井柑「三度目の正直」

先月号の「本の雑誌」で気になった本の積み残しだ。 ちなみにもう一冊は吉川トリコ「しゃぼん」なんだが。 で、この「三度目の正直」の著者は1985年生まれ。 表題作が、第8回坊ちゃん文学賞大賞受賞とか。 とりあえず、この情報は知らないままで読了し…

スタニスワフ・レム「ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)」

あの名作「ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)」の新訳版。 やっぱり読みやすい。 それは「ソラリスの陽のもとに」がロシア語訳をもとにした、 二次訳(こういう言い方があるのかはしらないが)だから、とかいう高尚なレベルでなく、 ただ単に、日…

黒川博行「文福茶釜 (文春文庫)」

古美術の世界を舞台にした、騙し騙されのコン・ゲーム。 黒川博行らしい、詳細なリサーチが存分に活かされている。 〝きれいごとじゃない〟とかいう表現では、もの足りない。 ありとあらゆる汚い手口の応酬。 もう、モラルとかは置いておいて、素直に楽しむ…

難波は千日前国際劇場にて「ロング・エンゲージメント」

古い劇場なんで、やや不安を抱えつつ、だった。 不安的中。ピント、合ってない。 地方の古い劇場ではたまにあるんだが、非常に目が疲れる。 フィルムの交換のトコでも、接続悪し。場面が少し飛ぶ。 最近は機械がよくなったせいか、あんまりこういうことない…

吉川トリコ「しゃぼん」

「檸檬のころ」の豊島ミホとは、R−18文学賞つながり。 ピンク色のカバー。オビには 「少女でもおばさんでもない。ずっとこのまま、女の子でいたい」。 すんません、オンナですらないんですが…、とテレながら購入。 しかし、照れつつも買ってよかった。何…

ジョン・マリー「熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き」

すごいタイトル。 そのまんま学術書の類と勘違いして、手にも取らない人多いんじゃないだろか。 もちろん、文芸書コーナーにあればそういうことも少ないだろうけど。 でも、こういうのにそそられるタイプの人は、一撃だろう。 僕もその一人。タイトル、そし…

道頓堀角座で「シャーク・テイル」

今回も「シュレック」シリーズ同様、 いかにもドリームワークスっぽいノリの、シャレの効いたCGアニメだ。 殺生のできないベジタリアンのサメ、レニーと、 ひょんなことから、 シャーク・スレイヤーになってしまった小魚(種類知らない…)のオスカー。 レニ…

梅田三番街シネマで「セルラー」

予想どおり、もう終映間際… まあ、本来ならビデオスルーでもおかしくないような感じだから、 やってるだけよかった、と思わなきゃいけないかも。 そりゃ、キム・ベイシンガーは出てるけど、 この人、「8mile」で見せたおばさん演技を見れば分かるように…

豊島ミホ「檸檬のころ」

「青空チェリー」「日傘のお兄さん」と、 キュンとくるいい作品を送り出してきたこの作家。 また、傑作を書いてしまってる。すごい。 ここ一週間ほどで、傑作!とばっかりいってるが、これも傑作だ。 嘘じゃないって、ホントだよ。 小説のテイストとしては、…

梅田ナビオTOHOプレックスで「サイドウェイ」

あの絶妙の味わいを醸し出していた、 切ない系コメディ「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイン監督作品。 ああ、もうアカデミー賞の脚色賞も受賞したから、蛇足かしらん? で、最初に書いとくと、傑作だ。 派手さは全然ないけど、味わいは芳潤に…

光原百合「最後の願い」

表紙が三崎亜記「となり町戦争」に似てる。 そういえば、買うとき一瞬見間違えたかも。 いや、そんなにたいしたことではないんだけど。 小劇団〝劇団φ〟を起ち上げようとする演劇青年、 度会恭平を狂言回しに据えた日常ミステリーの連作集だ。 結成準備の人…

黒川博行「疫病神 (新潮文庫)」

さあ、光原百合の新作、と思ってたけど、やっぱり変更。 先日読んだばかりの「国境 (講談社文庫)」の前作だ。 三浦しをん、と光原百合の静かな感じの小説の間に、 ちょいとにぎやかなエンタテイメントを挟むと、また味わいもひとしおかと。 「国境 (講談社文…

三浦しをん「むかしのはなし」

絲山秋子に続き、大好きな作家さんが続々と新作を発表してくれる。 光原百合「最後の願い」も、 〝積ん読〟に控えてて、まことにうれしい限りだったりする。 かぐや姫、桃太郎、花咲かじいさんなどの昔話をモチーフに、 一編一編が微妙にリンクする連作集だ…

黒川博行「国境 (講談社文庫)」

黒川博行の小説は、初めて読んだ、 というより、作者の名前すら知らなかった。 たまたま書店で平積みになっていたのを見て、 ちょっと気になって買ってみた次第。 プロットがとにかくそそる。 ナニワのコテコテヤクザ・桑原と、ぼやき屋の建設コンサルタント…

絲山秋子「逃亡くそたわけ」

マイフェイヴァリット作家の一人。待ってましたの新刊だ。 ただ、出版予告でタイトルを見て、かなりびっくりしてたのだが、 阿部真理子デザインの表紙も見てこれまたびっくり。 表紙の色、ちょっと趣味悪いな…と、やや引き気味になってしまった。 しかし、オ…