2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

森絵都「風に舞いあがるビニールシート」

「永遠の出口 (集英社文庫(日本))」「いつかパラソルの下で」の森絵都、待望の最新作。 〝大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語〟 6編の短編は硬軟織り交ぜつつも、 森絵都らしい、凜とした志とほのかな暖かみに満ちている。 これまでも数々…

梅田OS名画座で「ぼくを葬る」

「焼け石に水」「8人の女」のフランソワ・オゾン最新作。 東京より一カ月以上遅れて、ようやくの公開となった。 ちなみにタイトルの読み仮名は「ほうむる」ではなく「おくる」。 原題は〝LE TEMPS QUI RESTE〟、 英語だと〝TIME TO LEAVE〟ということになる…

井上夢人「プラスティック (講談社文庫)」

〝謎と恐怖のスパイラル 「私」の存在が崩壊する〟 読もう読もうと思っているうちに、 いつしか未読の山に埋もれていた待機本。 「ダレカガナカニイル… (講談社文庫)」と悩んで、こちらをチョイスする。 54個のファイルがおさめられた1枚のフロッピィ。 …

J・G・バラード「楽園への疾走 (海外文学セレクション)」

長編としては「スーパー・カンヌ」以来4年ぶりの最新作。 といってもあちらでの刊行は「コカイン・ナイト」より前の1994年。 バラードに関しては、この2作品含め6、7冊しか読んでいない、 落ちこぼれ読者なのだが、それでもこれは見逃せない1冊。 …

千日前国際劇場で「ポセイドン」

ご存じ1972年製作の傑作パニック・アドベンチャー、 「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクである。 もっとも、テレビで観た記憶がおぼろげにあるだけだから、 個人的には前作のイメージというのは無に等しい。 さらに、ジーン・ハックマン主演のオ…

藤野千夜「主婦と恋愛」

「ルート225 (新潮文庫)」映画化でちょいと話題の藤野千夜、 「ベジタブルハイツ物語」以来となる、1年ぶりの最新作。 ちなみに「夏の約束 (講談社文庫)」収録「主婦と交番」の続編、ではない。 〝夫といても、なぜか淋しい− 夫婦の間に流れる何気ない思い…

今邑彩「いつもの朝に」

「本の雑誌」など、各書評などで評判の1冊。 読んだことがないどころか、知らなかった(失礼…)作家だが、 強烈に興味を覚え、手に取ってみることにする。 〝『エデンの東』の感動を現代に甦らせる、驚くべき傑作。〟 そして、背表紙のオビがこう。 〝顔の…

梅田ブルク7で「ジャケット」

スティーヴン・ソダーバーグ×ジョージ・クルーニーが 設立したプロダクション、セクションエイトの製作作品。 現実と妄想、過去と未来が入り交じる、サスペンス・スリラーだ。 主演には戦場の〝ボルゾイ犬〟こと エイドリアン・ブロディ(「戦場のピアニスト…

豊島ミホ「陽の子雨の子」

豊島ミホ、温存していた新刊2冊のうちの1冊。 〝市立の男子中学に通う夕陽、 二十四にしては幼く見える雪枝、 十五で雪枝に拾われて四年になる聡。 思いがけない夏が、いま始まる〟 〝僕〟、夕陽は十四で、何の不幸もない。 すごく楽しい、ということでも…

敷島シネポップで「ダ・ヴィンチ・コード」

いろいろと話題のあの作品、である。 オープニング・ウィークエンドは、「SW3」に次ぐ史上2位。 イベント・ムービーとしては、大成功といっていいだろう。 メディア向け試写もお預けしまくったせいで、 肝腎の中身については、なかなか伝わってこないが…

古川日出男「ルート350」

〝僕の前に路<ルート>はある!〟 −小説の地平を切りひ拓く、著者初の衝撃短編集− 〝小説の未来を、世界の未来をここに読め!〟 ということで、古川日出男らしい大胆な文体で描かれた短編集。 〝らしい〟とか書いてるが、古川日出男は1冊1冊読むのに、 け…

ジャネット・ウォラック「砂漠の女王―イラク建国の母ガートルード・ベルの生涯」

〝イラク建国の立役者は、英国富豪令嬢だった!〟 〝アラビアのロレンスと共にイスラームの民を愛し、 人生に愛を求めつづけたひとりの女性。 砂漠を駈けぬけた、その愛と情熱に満ちた一生〟 「イラク建国の母」、「イラクの無冠の女王」、 「アラビアのロレ…

あさのあつこ「弥勒の月 (文芸)」

〝闇を歩く男に女が与えたのは、愛。 注目の物語作家が紡ぐ、哀感と憐憫の時代長編〟 〝闇の道を惑いながら歩く男たちの葛藤が炙り出す真実とは?〟 あの「バッテリー (教育画劇の創作文学)」の作者による最新作は、何と時代小説だ。 本所相生町の橋のたもと…

梅田ナビオTOHOプレックスで「グッドナイト&グッドラック」

「コンフェッション」に続く、ジョージ・クルーニー監督第2作。 アカデミー賞では作品、監督、主演男優、脚本、撮影、美術の 6部門でノミネート、ナショナル・ボード・オブ・レビューでは作品賞と、 各方面から高い評価を得た、話題の新作だ。 主演はデー…

シネマート心斎橋で「ナイロビの蜂」

〝きっかけは妻の死。たどり着いたのは、妻の愛〟 「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレスが描く、 夫婦の愛をめぐる、サスペンスフルな傑作ロマンス−。 アカデミー賞では、レイチェル・ワイズの助演女優賞に加え、 脚色、作曲、編集の3部門で…

ジェフリー・ディーヴァー「クリスマス・プレゼント (文春文庫)」

冬場に話題になったディーヴァー初の短編集。 「クリスマス〜」と銘打った本をこの時期に読むのもどうかと思うが、 何となくタイミングを逃したまま、読み逃すのもイヤなんで、 まあいいや、と読み始めることにしてみた。 原題は〝Twisted〟 さすが、どんで…

北野のフレンチ「ルセット」でお誕生日ディナー♪をいただく。

http://www.recette.jp/index.html 快晴のスカイマークスタジアムで 日焼けしまくり、一杯も呑まないうちから 真っ赤な顔でお店に出向く。 まずは食前酒、 シャンパンカクテルはベリーニとミモザ。 ああ、またこの季節になったな、と少し早めのベリーニをい…

〝青い〟バラに思わずうむむ… のばらフェスタ

「世界バラ会議2006」というのが、大阪で開催されたのだ。 ついでに「ばらフェスタ」というのが、鶴見緑地で開催、と聞き、いそいそ出かける。 長堀鶴見緑地線に揺られ、「鶴見緑地」へ。 地下鉄を降りると、周囲の平均年齢が異常に高いことに気付く。 …

梅田OS劇場で「ピンクパンサー」

あのピーター・セラーズによる人気シリーズが、 スティーヴ・マーティン主演で、銀幕に帰ってきた。 第1作「ピンクの豹」が1964年作品だから、 リアルタイムで観たことは当然ないのだが、 テレビでは何度も観た、懐かしいシリーズでもある。 まあ、もっ…

瀬尾まいこ「強運の持ち主」

「優しい音楽」以来、1年ぶりの最新作。 〝元OLの占い師、ルイーズ吉田は大忙し! 「がんばって。きっといいことがあるわ」 読んだら元気の出る、待望の新作〟 「占い」&「元気が出る」のフレーズに、やや引っかかりを感じるが、 そこは瀬尾まいこ、大丈…

ジェイムズ・カルロス・ブレイク「荒ぶる血 (文春文庫)」

「無頼の掟 (文春文庫)」のブレイク、邦訳第2弾。 「本の雑誌」最新号を始め、各書評で評判の一冊だ。 オビには〝最新作〟とあるが、解説によると、 2003年の原題〝Under the Skin〟だそうだから、 本当は最新作から数えて2作前、ということになる。 …

黒田研二「カンニング少女」

〝青春ミステリー新主流派宣言〟だそうだ。 読んだことのない作家に、馴染みのないジャンル。 普通ならたぶん、手にも取らないのだが、 文藝春秋でこのジャンルというのが、意外な感じと、 西島大介によるカバーイラストに釣られ、読んでみることにする。 天…

カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)」

〝『日の名残り (ハヤカワepi文庫)』のブッカー賞作家が 渾身の力で描くスリリングな冒険譚。〟 〝探偵は魔都上海に舞い戻った。 両親失踪の謎に挑むために。〟 この作品、これまでタイトルしか知らなかったのだが、 重厚な文学かと思っていたので、手を出し…

桐野夏生「ダーク (上) (講談社文庫)」「ダーク (下) (講談社文庫)」

「顔に降りかかる雨 (講談社文庫)」「天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)」の 私立探偵、村野ミロ・シリーズの完結編、ともいえる。 なのだが、シリーズのファンから大きな論議を呼んだ作品だ。 このシリーズ、キャラクター編ともいえる「ローズガーデン (講…

シネリーブル梅田で「ブロークン・フラワーズ」

ジム・ジャームッシュ、あまり縁のない監督だ。 「10ミニッツ・オールダー」の一編は観たけど、 長編だと、実は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」以来。 ちょっと興味のあった「コーヒー&シガレッツ」も見逃した。 今回もビル・マーレイ主演じゃなか…

マーク・カーランスキー「1968―世界が揺れた年〈前編〉」「1968―世界が揺れた年〈後編〉」

〝思い出して下さい。この年、あなたは何をしていましたか?〟 何もしてません。そりゃ、まだ生まれてませんから… 〝激動の一年がよみがえる。これは、決して過去のことではない。〟 1968年とは、現代史における、ひとつの転換点となった1年でもあった…

小川洋子「ミーナの行進」

「博士の愛した数式 (新潮文庫)」の小川洋子最新作。 〝美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない− 懐かしい時代に育まれた ふたりの少女と、家族の物語〟 高い、高い期待感を胸に、満を持して読み始める。 時代は1…

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

「日の名残り (ハヤカワepi文庫)」のカズオ・イシグロ最新作。 〝謎の全寮制施設に生まれ育った若者たちの 痛切なる青春の日々と数奇な運命を 感動的に描くブッカー賞作家の最新長編〟 発売後ただちに、あの「タイム」誌の オールタイムベスト100に選出さ…

天神橋筋六丁目、ホクテンザで「ロンゲスト・ヤード」

天神橋筋六丁目、大阪では略して天六、という。 ちなみに谷町九丁目は谷九だし、上本町六丁目は上六。 そんなことはどうでもいいのだが、この天六ホクテンザだ。 一応ロードショー館ではあるはずなのだが、 いまどきなかなかないくらいの場末感が漂う。 東京…