渋谷アミューズCQNで「JUNO」

mike-cat2008-06-19



“そのつもり。
 ジュノ16歳。いちばん大人。”
ストリッパー出身のディアブロ・コディの脚本が、
アカデミー賞を獲ったことでも話題になったコメディ・タッチのドラマ。
ほかにも作品賞、監督賞、主演女優賞3部門でノミネート。
16歳で思いがけない妊娠を経験するジュノを演じるのは、
「ハードキャンディ」「X-MEN:ファイナル ディシジョン」エレン・ペイジ
ジュノを見守る父に「スパイダーマン」シリーズでは鬼編集長を演じるJ・K・シモンズ。
ほかに「キングダム/見えざる敵」ジェニファー・ガーナージェイソン・ベイトマン
監督は「サンキュー・スモーキング」ジェイソン・ライトマン
製作には名優ジョン・マルコヴィッチも名を連ねる。


ちょっとオタクめだが、ごく普通の女子高校生、ジュノは、
同級生のポーリーとの興味本位のセックスで予期せぬ妊娠をしてしまう。
一度は中絶しようと施設を訪れたジュノだが、産むことを決意。
養子縁組に向け、里親探しを始めるのだが…


16歳の妊娠・出産と聞くと、杉田かおる@「金八先生」を思い出す。
ショッキングどうこうというより、どうやって育てていくのか、が気になるところ。
この作品の中でも触れられているが、かの国では特に、
10代での出産は、低所得による生活苦につながるというのが多いようだ。
そのほかにも中絶や養子縁組など、
さまざまな話題を内包する作品としても話題になったらしい。


ただ、この作品のよさは、そうした問題への社会的メッセージではない。
ジュノを取り巻く環境ははっきりいって、かなり理想的で、
現実の10代の妊娠を取り巻く状況とは少々違う印象だ。
特に、J・K・シモンズとアリソン・ジャネイが演じるジュノの両親は、
その包容力といい、理解のよさといい、ちょっと出来過ぎの感もある。
もちとん経済的には裕福とは言い難いが、親としては立派。
社会的問題となっている10代の妊娠に対しての、
ある意味での理想像ではあっても、問題への回答とはなっていない。


だが、一方でその両親とジュノとのドラマは秀逸だ。
10代の妊娠についてわかったような口を聞く検査技師に、
かっこよく啖呵を切ってしまう義母ブレンには思わず喝采だし、
男親のヤキモキを絶妙ににじませ、ジュノを見守る父はもう最高。
ガーナーとベイトマンが演じる里親夫妻や、
同級生ポーリーを演じるマイケル・セラらも含め、共演陣はかなり強者だ。
妊娠を通じて、さまざまな経験をするジュノのドラマと合わせ、
なるほど話題性だけの映画ではないこともよくわかる。


小生意気なジュノの突発的で衝動的な行動を、
浅はかに見せないライトマンの演出も見事といっていい。
コミカルさとリリカルさを兼ね備えた映像も抜群で、
父アイヴァンをも越えるセンスが見え隠れしていると思う。


前述の通り、実際の社会問題についての視点は微妙。
社会派ドラマ的な部分を期待して映画館に出向くと、
かなり不満が残りかねないような印象は否めないが、
純粋にドラマとして考えれば、小品のよさがうまく出た佳作。
くすくす笑いながら楽しめ、ちょっとキュンとなる映画だと思う。