梅田三番街シネマで「セルラー」

mike-cat2005-03-09



予想どおり、もう終映間際…
まあ、本来ならビデオスルーでもおかしくないような感じだから、
やってるだけよかった、と思わなきゃいけないかも。
そりゃ、キム・ベイシンガーは出てるけど、
この人、「8mile」で見せたおばさん演技を見れば分かるように、
ある意味、もう「ナインハーフ」の美人女優ではなく、性格俳優としての分類だし…
もう一人の主演クリス・エヴァンスは無名、
ジェイソン・ステイサムとか、ウィリアム・H・メイシーは僕も大好きだけど、
日本でのマーケットを考えたら、かなり難しいポジションだ。


しかし、公開に踏み切った理由は観れば明白。
ひと言でいえば、けっこう面白い、
というか、料金分以上は間違いなく保証できる佳作だ。
確かにサスペンス・アクションとして、
オリジナリティあふれるか、と問われれば、やや微妙かもしれないが、
テンポはいいし、ストーリーにも切れがある。
演出もそこそこ小技が効いてて、観ていて退屈させない。


突然、わけもわからず自宅から拉致監禁された主婦ジェシカ。
破壊された電話を通信手段に、ようやく発したSOS。
だが、その電話を受けたのは、軽いニイちゃんだった…
なかなかくすぐるプロットだ。
それもこの携帯電話、という小道具をなかなかうまく使う。
なにしろ、まさに〝いのちの電話〟だから、切れちゃいけない。
圏外になったら、もうおしまい。電池切れでももうおしまい。
その舞台設定をうまく使って、サスペンスを盛り上げる。


監督はデヴィッド・R・エリス。
「ファイナル・ディスティネーション」の続編、
デッドコースター」(原題「FINAL DESTINATION 2」)の監督だ。
どうもこの人、俳優とスタントマン、スタント・コーディネーターから、
マトリックス・リローデッド」のセカンドユニット監督などを経た苦労人。
なるほど、やけにこなれた作り方をすると思ったら、
そういう経緯があったのか、と納得できた。
ビッグ・ガジェットでもない、そこまで派手な出演者もいない映画を、
ホント、うまいこと文字通り面白い映画に仕立て上げている。
作ってるだけ、のジョエル・シュマッカーとかは、別次元の職人ぶり。
もちろん、細かい点を指摘していけば、
穴はそれなりにあるんだろうが、
ハラハラし通しの95分は、あっという間に過ぎていく。


「カラー・オブ・ハート」「マグノリア」「ファーゴ」
の名優ウィリアム・H・メイシーも、捜査に当たる警察官役として、
そのショボい持ち味を、いい感じに醸し出している。
想像したくないけどね。自分の命のカギを握る警官がメイシーだなんて…
今回もメイシーの何ともいえない雰囲気は、
アクセントとして、スパイスとして、いい感じに効いている。
ちなみに、ガス・ヴァン・サント版「サイコ」みたいなことはないから、ご安心を。


難をいうなら、ジェイソン・ステイサムの味がいまいち出ていないことか。
僕はアホ映画ファンなんで、
実は「トランスポーター」とか好きだったりするんだが、
あの突き抜けた感じが、この映画では出きっていなかったかも。
まあ、それが出ちゃうと、映画の方向が全然違ってしまうだろうから、
しかたがないのかもしれないけど。


LA、サンタモニカを舞台にした、明るいムードもたまらない。
主演のクリス・エヴァンスの持つ、
軽さと、次第にジェシカ救出に燃えていく熱さとのバランスもいい。
テキサス・チェーンソー」の色っぽいおネエちゃん、
ジェシカ・ビールとかもちょい役で出てて、なかなかうれしいおまけもあり。
たぶん、半年前から期待していた大作映画だったとしたら、
物足りなさも微妙に残ったのかもしれないけど、
カジュアルに楽しむ映画としては、十分合格点だ。
たぶん、もう劇場で観るチャンスは少ないかと思うが、
気になった方はぜひDVDかビデオで。
買うと微妙にきついから、レンタルでぜひ観てちょ♪ って感じだ。
こういう映画、軽く観られがちだが、いやいや、これも映画の醍醐味。
年に3、4本しか観ない人はともかく、
映画を日常的に観るには、こういう作品も欠かせない。
人生がどうの、愛がどうの、世界がどうの、宇宙がどうの、
ばっかりじゃ、ちょびっと重っ苦しいからね…