くしカツ満喫、新世界紀行


そんな映画の前に、行ってきました通天閣&新世界。
とにかく、すごいとしかいいようがない。
昭和にタイムスリップ、というか、時がもう流れていない感覚。
悪くいえば、流れが澱んじゃって…、みたいな。
うまくいえないが、日本のベタな原風景を見てしまった感じだ。


地下鉄で日本橋からひと駅、わずか2、3分。
自宅から、歩こうと思えば歩ける距離にあることにけっこう驚く。
まあ、家の窓から通天閣が見えるんだから、当たり前だが。
恵美須町駅で降り、階段を上がる。
何だか空気が違う。道頓堀もベタな大阪だと思っていたが、
そんなの全然甘かった。ヘンな表現だが、とても大阪だ。
いい意味でも悪い意味でも、ものすごく雰囲気がある。


まずは、とりあえず通天閣
近くに寄ってみると、意外と低い。けっこう意外。
でっかい将棋の駒を横目に見つつ、エレベーターで2階へ上がる。
2階といっても、実際は6階の高さらしいが…
建物の中に入ってみると、中身は温泉町のホテル並みだったりするんだが、
それもまたよし。あんまりおしゃれじゃ、通天閣っぽくない。
いまの通天閣は、何と二代目だという。
戦時中に焼けてしまった、
凱旋門エッフェル塔くっつけた〝初代〟通天閣の写真が飾ってある。

けっこうキッチュ。このまま再建してもよかったのに、なんて思ってみたりもする。


展望台からの景色はなかなか、
といいたいところだが、下見るとかなりきちゃない。ま、しかたないか。
もちろん、目を下に向けなければ、北に梅田や大阪城
道頓堀の新名所、ドンキホーテの観覧車も見えてナイスだったりする。
もちろん、自分の家も見えたりして、感慨はひとしお。
まあ、梅田のスカイビルでも思ったことだが、
大阪って、やっぱり街の規模が小さい。
六本木ヒルズの森タワーとか、新宿のパークハイアットとか昇っても、
東京を完全に見下ろせる、という感覚はない。
これが大阪だと、何とか手の届きそうな距離に、
すべてが収まっているあたり、大阪の人には悪いが、
やはり街の規模は、ぜんぜん比較にならないんだとあらためて実感する。


そんな不届きな想いを抱きながらも、
ビリケンさんの足の裏を触らせていただいて、下りエレベーターへ。
いよいよ、ジャンジャン横丁へと足を踏み入れる。
映画「どついたるねん」とかでしか知らなかった世界が、そこに展開する。
まあ、思ったよりは小ぎれいだったけど、やっぱり濃ゆい。
スマートボールに、囲碁、将棋、麻雀。
最初にも書いたが、失われた昭和、みたいなムードが漂う。
「八重勝」「てんぐ」「だるま」などの行列店を横目に見つつ、
くしカツ「ちとせ」へ。

牛くし、じゃがいも、アスパラにタコ、タマネギ、そしてどて焼き。
見たまんま、テキトーに注文する。
ぼってりと、厚ぼったいコロモ。ほとんど見えないパン粉の姿。
「厳密にいって、これはアメリカンドッグ?」とか、考えてはいけない。
たぶん、これこそ由緒正しい大阪のくしカツなんだと思う。


実際、これはこれで、けっこうおいしいのだ。
火の通りは、意外なほどに絶妙。
ひとくち食べると、中の具がそのまま抜けてしまい、
残るはボリューム抜群のコロモだけ、だったりすることもあるが、
見た目では想像できないくらい、おいしかったりする。
「二度づけ厳禁」で有名なソースはウスターソース状。
ヘンな光を放っていたりするけど、それもご愛敬。
こういうスタイルでしか味わえない、
いままで、大阪で何度かくしカツを食べたことはあったが、
まったくの別物としかいいようがない。
いい意味での〝ゲスな味〟が、口の中に広がる。
まさに、極上のB級、C級グルメだった。


極上のフレンチを食べた後と、ひと味違うが、
これもまた〝おいしい〟高揚感であることには間違いない。
次はどの店に行ってみようかな…。
こころ浮き立たせながら、ジャンジャン横丁を後にしたのだった。