天神橋筋六丁目、ホクテンザで「ロンゲスト・ヤード」

mike-cat2006-05-01



天神橋筋六丁目、大阪では略して天六、という。
ちなみに谷町九丁目は谷九だし、上本町六丁目は上六。
そんなことはどうでもいいのだが、この天六ホクテンザだ。
一応ロードショー館ではあるはずなのだが、
いまどきなかなかないくらいの場末感が漂う。
東京でいえば、銀座シネパトスにあたるのだが、
シネパトスがまるで上質のシネコンに思えるほど、ここは…だ。
非常口ランプはやたらと明るいし、場内の汚さはかなりのもの。
はっきりいって、貴重品を横の座席に置きたくない劇場だ。


じゃあ、何でそんなトコ行くのか、といえば、ここでしかやってないから…
まあ東京でもシネパトスとか新宿K’s cinemaだから、当たり前かも知れない。
アダム・サンドラー×アメリカン・フットボールという、
日本での劇場公開上、2大ウィークポイントを抱えている以上、仕方ない気もするが。
しかし、何でみなさんアダム・サンドラーの映画観ないの?


同じくアメフット題材の傑作「ウォーターボーイ」とか、
ドリュー・バリモア共演の80年代風ラブコメウェディング・シンガー」だとか、
P・T・アンダーソン監督の「パンチ・ドランク・ラブ」だとか、
ジャック・ニコルソン共演の大傑作コメディ「N.Y.式ハッピーセラピー」とか…
SNL出身のサンドラーのギャグはきわどいのが多くって、
字幕では伝えきれない部分が多すぎるのも確かだが、
それを差し引いても、やっぱりサンドラーの魅力は十分あるはずなのに…


というぼやきはこれくらいにして、映画に戻る。
ご存じ、バート・レイノルズ主演の74年の同名作品のリメイク。
ヴィニー・ジョーンズ主演の「ミーン・マシーン」(01=こちらはサッカー)も含め、
2度目のリメイクということになる。


八百長疑惑で追放された元NFLのスター、ポール・クルー=サンドラー。
恋人との痴話喧嘩が、警察とのカーチェイスにまで発展し、あわれ刑務所行き。
だが、収容された刑務所でクルーは、看守たちのフットボール・チームのコーチを頼まれる。
この要請こそ一度はことわったクルーだが、
看守チーム強化のための〝噛ませ犬〟チーム結成を余儀なくされる。
クルーのもとに集まる、個性豊かな囚人たち…
対戦が近づき、囚人たちが力をつけていく中、
ヘインズ刑務所長=ジェームズ・クロムウェルの黒い手が迫る。


近年のリメイク・ブームもあって、
リメイクというだけで、鼻白む人も多いが、この映画はなかなかどうして悪くない。
あの男くさいバート・レイノルズと、アダム・サンドラーというと、
ずいぶんイメージは違うようだが、おちゃらけっぽいイメージは皆無だ。
もちろん、サンドラーらしい無鉄砲さと、減らず口で笑いは誘うが、
その笑いが硬質なスポ根ストーリーという軸をブレさせることはない。
あくまでポイントを絞った笑いと熱くなるドラマ、そのバランスに配慮した作りは見事だ。


お笑い担当は、クリス・ロック演じる所内の調達屋ケアテイカーが引き受ける。
得意のマシンガントークの全貌を、字幕だけで楽しむのは不可能だが、
それでも絶妙のスパイスとして、男たちのドラマを引き立ててくれる。
オリジナル版の主役、バート・レイノルズが、
かつてハイズマン・トロフィーを受賞したコーチ役の役で登場するのもうれしい。
レイノルズ演じるネイト・スカボローの活躍には、思わず胸が熱くなる。
そのほかネリーやボブ・サップ、何とマイケル・アーヴィン(元カウボーイズ)と、
各界からのスーパースターも登場して、思わず興奮してしまう。


ストーリーはそのまんま真っ向勝負だ。悪くいえば、ひねりがない。
あらすじに書いた通りの展開で、ほぼ何のサプライズもなく進行する。
だが、こういう映画に中途半端なひねりが必要ないことは、
スポーツもの映画がお好きな方には、もうご承知の事実ともいえるはずだ。
じっくりと、ひとつずつのエピソードを積み重ね、クライマックスの興奮につなげる。
わかっていても、ググーッと興奮と感動が沸き起こってくるのだ。


アメリカン・フットボールといえば、ルールが分からない、が通り相場だが、
専門誌「タッチダウン」監修の字幕などで、それなりに配慮はされているので、
まったく競技を知らない人でも、その面白みは十分伝わってくるはずだ。


アダム・サンドラーの過去の傑作群と比べると、〝中の上〟くらいの感もあるが、
それでも十分すぎるほどのエンタテインメント性を備えた佳作といっていい。
少なくとも「オリジナル版を見たからいいや…」と、パスするのは惜しい。
東京を含め、劇場事情がどうにもよくないようなので、
「ぜひ、スクリーンで!」とは言いづらいところだが、DVDとかでなら間違いのないお勧めだろう。