梅田OS劇場で「ピンクパンサー」

mike-cat2006-05-13



あのピーター・セラーズによる人気シリーズが、
スティーヴ・マーティン主演で、銀幕に帰ってきた。
第1作「ピンクの豹」が1964年作品だから、
リアルタイムで観たことは当然ないのだが、
テレビでは何度も観た、懐かしいシリーズでもある。
まあ、もっとも観ていたのは子供の頃だし、
「何で、もっとあのアニメのピンクパンサーが出てこない!」と、
まったく意味もわかってないままだったんだが…


サッカーのフランス代表監督がスタジアムで殺され、
指にはめていた高価なピンク・ダイヤモンド「ピンクパンサー」が盗み出された。
パリ市警のドレフュス警部=ケヴィン・クラインは、
世間の注目をよそに向け、極秘捜査に専念するため、
捜査の責任者にフランスきってのドジ警官、クルーゾー=スティーヴ・マーティンを抜擢する。
だが、裏付けのない自信にあふれたアホのクルーゾー警部の、思わぬ活躍が…


ということで、消えた「ピンクパンサー」をめぐる騒動が展開される。
もちろん、見どころはスティーヴ・マーティンのおとぼけドタバタ劇。
吉本新喜劇もびっくりの、クドいギャグをこれでもかと連発していく。
そして、バカにしたようなフランス語訛りで展開される、ケヴィン・クラインとの掛け合い、
そしてドレフュス警部のスパイとしてクルーゾーを見張るポントン=ジャン・レノとのドタバタ…
くだらないのひと言で片付けるのも簡単だが、
これだけ徹底してやられると、自然と笑いがわき上がってきてしまう。


スティーヴ・マーティンって、日本ではあまり評価が高くない。
日本での公開作品も「花嫁のパパ」シリーズ以降はさほど目立ったものもなかった。
それだけに、この人気シリーズですら、公開は大都市部の単館のみ、という体たらく。
しかし、この「ピンクパンサー」のマーティンは、はっきりいって最高だ。
お約束の脱力系ギャグを、すました顔で次々と繰り出す、その仕種。
ピーター・セラーズのクルーゾーとはひと味違う、新しい解釈のクルーゾー像を造り出した。


ケヴィン・クラインジャン・レノといった実力派も、
その作品世界にずっぽりはまったマヌケなキャラクターを喜々として演じていて、またうれしい。
〝虐められ役〟に徹したクラインの扱いは、
あの「裸の銃を持つ男」のOJ・シンプソンを思い起こさせてくれたし、
ジャン・レノは「お金さえもらえば何でもやる」職人ぶりを象徴するような、アホぶりを見せてくれた。
やっぱりコメディはこうじゃなくっちゃ、というやつだ。
さらに、クライヴ・オーウェン(「クローサー」「シン・シティ」)、
ジェイソン・ステイサム(「トランスポーター」)のカメオ出演もなかなか楽しかったりする。


もちろん、予告で観る以上の驚きの展開はまったくといってないし、
ひとによってはマーティンのクドいギャグがお気に召さない人もいるだろう。
一応ヒロインのはずのビヨンセも、さほど目立った部分はない。
まあ、思った通りの映画といえば、そうなんだが、それでもいいのである。
「ジャスト・マリッジ」のショーンレヴィ監督による演出で、
テンポは期待していた以上によかったし、求めていた通りの方向で笑いのツボも突いている。
お好きなヒトにはたまらない作品、といえばいいんだろうか。
お好きな僕としては、かなり満足度の高い作品。
再シリーズ化を臨むのは無理かも知れないが、
またこのキャストで観てみたい、そんな気がする、侮れない作品だった。