マイクル・コナリー「夜より暗き闇(上) (講談社文庫)」「夜より暗き闇(下) (講談社文庫)」

mike-cat2007-03-27



〝現代ミステリーの雄コナリーが、人の心に巣くう闇を抉る!〟
ハリー・ボッシュのシリーズに、「わが心臓の痛み」のテリー・マッケイレブ、
「ザ・ポエット」のジャック・マカヴォイのコナリー作品オールスターが登場。
ボッシュにまたも降りかかる厄災、そして闇に包まれた事件―


心臓移植で九死に一生を得たテリー・マッケイレブだが、
天職でもあったFBIの心理分析官は引退、悠々自適の毎日を送っていた。
だが、マッケイレブはかつての知り合いの女性保安官から、ある依頼を受ける。
それは、ウエスト・ハリウッドで発生した、異常殺人のプロファイリング。
マッケイレブは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュのもとを訪ねる。
そのボッシュは、ハリウッドの大物映画監督による殺人事件の公判中だった。
浮かび上がる意外な容疑者、それは何と―


基本的には、マッケイレブの視点で物語は進行する。
ある意味では、ボッシュのシリーズ、というより、マッケイレブのシリーズともいえる作品だ。
ということで、マッケイレブのこころの葛藤も、物語の大きな核となる。
心臓移植にまつわる事件を解決したマッケイレブだが、そこには皮肉な結末が待っていた。
その代償を乗り越え、幸せな家庭を手にしたマッケイレブだが、
かつての仕事に対する想いは、どうしても振り切ることができない。
妻の深い愛情よりも、愛しい我が子の寝顔よりも、殺人調書を選んでしまう。
〝自分にはどこかおかしなところがある、
 なにか欠けたところがあるという本質的な結論に目を完全にふさぐことはできなかった。〟


そのマッケイレブが関わることになった事件の、
犯人が残したメッセージは〝気をつけよ、気をつけよ、神は見たもう〟
そして、現場に残されたフクロウの模型が指し示すのは、恐ろしい事実。
〝終末と地獄の業火の前兆、罪の報いの警告〟
その〝夜より暗き闇〟へ、罪人を導くのは、秘密めいた、あの男なのか―


そんな事件と同時進行するのが、ボッシュの法廷での戦いだ。
悪徳弁護士と、姑息な犯罪者の前に、苦闘を続けるボッシュに、
またも突如降りかかる、とんでもないトラブル、そして疑惑。
「ラスト・コヨーテ」の事件も、ふたたび浮上し、ボッシュの生き方が問われる。
事件の解決する過程でも、ボッシュの目指す正義の方向が、はっきり示される。


そんなボッシュとマッケイレブのコラボレーションは、
十分すぎるほどの読み応えで、ページをめくる手を止めさせない。
「ザ・ポエット」マカヴォイも、あくまで脇ながら、物語を盛り上げる。
もういったい、どこまでこのシリーズは高い境地へ向かっていくのか。
今後に向けても、展開が気になって気になって、仕方がなくなる。
読み終えてまたも思うことは「早く次を読みたい」。
ワンパターンなのだが、ホントそう思ってしまうのが、このシリーズなのだ。


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夜より暗き闇 上
マイクル・コナリー〔著〕 / 古沢 嘉通訳
講談社 (2003.7)
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夜より暗き闇 下
マイクル・コナリー〔著〕 / 古沢 嘉通訳
講談社 (2003.7)
通常2-3日以内に発送します。