今シーズンの鍋おさめ、千日前はハリハリ鍋「徳家」へ。

mike-cat2006-04-06

http://www.tokuya.jp/next.html


伊丹空港に向かう高速の途中で、看板が見えるアレである。
ホントは島之内の「西玉水」に行きたかったのだが、
いろいろ事情などあり、大衆店のこちらに決定、となった。
道頓堀から二筋ほど入る、法善寺横丁の反対側。
ちょっと怪しげなテナントビルの2階に向かう。
気持ちやや暗めの店内に入ると、いかにもな割烹っぽい佇まいだ。
テーブルに並んだお皿セットがかわいい。
絶妙のチープさ加減が、たまらない。

メニューはさすが専門店とあって、なかなか豊富。
しかし、鯨料理が一般的な証拠なのか、説明がいまいち不十分だ。
連載開始当初からの「美味しんぼ」ファンだから、
百尋(漢字、たぶんこれでいいと思うのだが…)だの、コロだの、さえずりだの、
と言われてもピンとくるけど、もう少し丁寧な解説があってもいいんじゃない?
そんな思いを抱きつつ、とりあえずハリハリ鍋とともにザッと注文する。
さらしクジラにコロのおでん、尾の身の刺身にベーコン、さえずり、百尋…

まずは定番のさらしクジラからいただく。
スーパーとかでもよく売っているヤツ。
まあ何といいましょうか、さらしクジラですな、というお味だ。
何とも言えないコリコリした歯応えが、鯨食べてます、という感じ。
ちなみに尻尾のあたりの皮のさらしたものだ。
余談だが、どうもこちら関西では、「お化け」とも言うらしい。


尾の身の刺身は、解凍具合がポイント。
供される時点ではまだ解凍が甘いので、じっと待っていただく。
味の方はまあ、やっぱり冷凍ものということで、過剰な期待はしない。
たぶん、遠洋漁業の漁師さんとかが生で食べる味は、
さぞやたまらないんだろうな、と想像を膨らませながら食べる。


ベーコンというと、スーパーで売ってる赤く着色されたのがお馴染みだが、
こちらで供されるのは、無着色のちょっと生ベーコンっぽい雰囲気。
口の中でさらりととろける脂肪の味に、思わずうっとりする。
たぶん、いくら食べても飽きない味かも知れない。


さえずりは、いわゆる舌となる。
刺身ふうにスライスしたもののボイルと、おでん風に煮込んだものをいただく。
刺身はシコシコした食感、適度な脂の味に、これまた陶酔…
煮込みもこれまた、ふるふるした独特の食感が楽しめる。


百尋は小腸をボイルしたもの。
見た目はだいぶきわどいのだが、ちょっとコリコリめの食感はなかなか。
いわゆる珍味の域を出ないのは確かだが、
モツ好きとしては、欠かすことができない一品といえそうだ。


そして、コロのおでん。
これは関西では定番のおでん(かんと煮き)の具材だ。
分厚い皮の脂を抜いて、干したものを、水で戻して煮込む。
これもまたぷるんぷるんしながら、口の中でとろけていく。
何でもこのコロ、マッコウクジラのヤツは高級だが、たまらん美味らしい。
そのうち機会があったら、ぜひにいただきたいものだな、と。


そしていよいよメインのハリハリ鍋に挑む。

かたくり粉をはたいて一度湯通しした鯨肉に、たっぷりの水菜。
〝ハリハリ〟の語源ともなったシャキシャキの水菜と、鯨の食感が混ざり合い、
思わず顔がほころぶ、絶妙のマリアージュを生み出す。
軽くハラペーニョを利かせた、カツオのだし汁も風味を引き立たせている。
肉なんで、昆布の方がいいのでは? という疑問をものの見事に振り払ってくれる。


東京にいた頃はたまに渋谷の専門店(109のトコにある店)に行ってたし、
沖縄で〝イルカ炒め〟というとんでもないメニューがあると、迷うことなく食べてきた。
ちなみにイルカ炒めは、皮ごとぶつ切りにしたものをショウガ風味で炒めた一品。
愛護運動している人に糾弾されそうだが、まあなかなかのお味だった。
しかし、こうやって本格的に鯨尽くしをしたのは初めてだったりする。
やっぱり日本の誇る食文化だな、
と「美味しんぼ」の受け売りそのまんまの感心をしてしまった。
こうなったら、高級店(らしい)「西玉水」も行ってみなければ!
次の鍋シーズンに向け、野望を燃え立たせつつ、お鍋たちにしばしの別れを告げた。