ミナミ島之内は「鯨料理 西 玉水」でクジラ三昧

mike-cat2007-11-25



実は東京へ戻ることが決まったのである。
大阪へ転勤して3年。長かったような、短かったような。
決まってしまうと早いもので、あっという間にいろいろせわしくなる。
で、引っ越し前に大阪の味を、ということで、
鯨料理の本命「西 玉水」へ行ってみることにする。


クジラといえば、以前道頓堀の「徳家」には行ったが、あそこはあくまでカジュアルな大衆店。
鯨料理そのものが元来、大衆料理と考えれば、
それも王道かもしれないが、やはり老舗で食してみたいのが人の常だ。
値段はそこそこ危険な感じだし、カードも不可、ということで、
久しぶりにやや緊張感を味わいつつ、お店に向かう。


宗右衛門町から堺筋をはさんで反対側、
島之内のやや奥まったところに歩を進めると、落ち着いた風情の店が現れる。
のれんをくぐると、板さんの威勢のいい掛け声と、
仲居さんの丁寧な対応が、いい感じで客を迎えてくれる。
このテの老舗にありがちな、無礼な感じは皆無。
心地よく二階の座敷に上がり、コースの内容を訊く。
コースの中身だけで、十分満足できそうな感じだが、
お勧めという鯨カツに、サエズリの湯引きと煮込みを追加する。


まず現れるのは、この店自慢の尾の身の刺身。

ノルウェーから直輸入したというナガスクジラは、
これまで食べたことのある鯨とは、一線を画す印象だ。
一緒に供されるイワシクジラ(こちらもナガスクジラ科らしい)とともに、
口の中で広がる風味は、まさしく獣肉と魚肉の中間といったところ。
思わず「なるほど」ちおうなりたくなるような、そんなお味である。


続いて現れるのが、サエズリの湯引き。

カラシ酢味噌は正直くどい印象はあるが、
この口の中でとろける感覚は、まさしく格別という感じだ。
大豆とともに炊いた煮込みもいい。

おでんなんかで食べると、ホント旨味が身に沁みるサエズリだが、
こうして一品料理として登場すると、また味わい深い。


狩場焼き、はすき焼き風といっていいのだろうか。

肉が鉄板で焼ける音、そして匂い。食欲はますますヒートアップする。
広がる肉汁、鼻に抜けるような豊潤な香り。
「狩場焼き」というのだから、捕鯨の現場での調理法なのだろうか。
肉の熟成を考えると、獲れ立て生がベストかどうかは微妙だが、
さぞかし豪快で、野趣あふれる料理だろうな、と想像は膨らむ。


さて、そしてハリハリ鍋である。

これで3人前なのだが、いかにも豪快な盛りつけ。
肉を彩る粉山椒も、最高潮に達した食欲をそそるいい色合いだ。
さて、鍋奉行登場、と思いきや、鍋の調理は仲居さんにお任せ。
「よそさんでは存じ上げませんが…」
きちんと責任を持って作る、専門店としての矜持といったところか。


茶碗に盛りつけてもらうと、こんな感じになる。

味が深い。
肉が想像以上に小さくなるのにも驚くが、
水菜のハリハリ加減といい、肉の食感といい、さすが、である。
この茶碗1杯では…、というご心配はご無用。
もう一度、仲居さんが調理して、お茶わんに盛ってくれる。


そして、ここで追い打ちをかけるようなダイナマイトが登場。

鯨カツ、である。
ぎりぎり給食で鯨の竜田揚げを食べた世代としては、
それなりに郷愁の漂うメニューだったりもするのだが、そこは専門店。
鯨肉そのものの管理がいいのに加え、
ミディアムレアな火の通り加減が、まさしく絶妙なのである。
ハリハリ鍋が胃に優しいこともあって、ボリューム的にもいい感じ。
ああ、旨い、旨い…と、ひたすら味わう。至福の時である。


食後は柿と、女将さんお手製というお汁粉がいただける。

何でも、季節によって水菓子やお汁粉など、趣向を凝らしているとか。
お心遣い、何ともうれしい限りなのである。
お勘定は、まあだいたい一流どころのフレンチと同じくらい。
値段だけをいえば、まあ「高い」のカテゴリーには入るが、
お味と雰囲気を考えれば、むしろ値ごろ感が際立つ。
粉もんではない、大阪ならでは味を味わい、
心置きなく、大阪を後にできるかな、という気分になってくる。
ま、関西といえば、のまる鍋を食べていないのが心残りではあるのだが…