なんば千日前・敷島シネポップで「宇宙戦争」

mike-cat2005-06-29



初日初回、ああミーハー…


すごかった。ドキドキワクワクだ。
まず最初に、1933年のオリジナル版への想いを語るピーター・ジャクソン
そして、ジャック・ブラックエイドリアン・ブロディナオミ・ワッツ
魅力のキャストが次々と登場する。そして、遙か南の島へ。
そこで彼らが見たものは!!
驚愕の映像、手に汗握るスリル、そしてあの切ないラストへ…
あ、これ「キング・コング」の予告のお話。
何でこんな話をするかというと、
きょう劇場で観たものの中で、一番面白かったのがこれだから…


トホホ映画だろうな、とは予想していた。
いや、後出しジャンケンじゃなく。


だって、すっかり〝トム珍〟のニックネームも違和感なくなったトム・クルーズ最新作だ。
若手女優数名へのオーディションの結果、
恋人にケイティー・ホームズが選ばれた、だとか、
TV出演したら、まるでチンパンジーくんみたいにウキャウキャ跳ね回った♪、だとか、
インタビューでサイエントロジーの問題に触れられて、
イメージ第一のトムとしては考えられないような逆ギレをかましてみたりとか…
いまや、その演技よりも、奇行の方が目立つ(マイケルほどじゃないが…)トムちんだ。
肝心の映画だって「ミッション・インポッシブル」以降、
常に「やあ、トムのカッコいいトコ、見てくれたかな?」的な演技がヒートアップしてるし…


その上、ダコタ・ファニングだ。
ハイド・アンド・シーク」でも散々クサしたが、
あの「ダコタちゃんよ♪ あなたより賢いのよ」という念波が、
常にスクリーンから発散される、あのこまっしゃくれ過ぎ少女だ。
いま非常に今後が心配される(マコーレー・カルキンみたいに?)、微妙なお年頃。
予告を観ているだけで、
「そんな年ごろの子供が、そんな言葉遣いしないだろ?」と、げんなりしてくる。


で、トドメがスピルバーグだ。
「E.T.」だとか「レイダース」あたりはともかく、
近年は〝終わったヒト〟感が、ますます強くなっているあのヒトだ。
シンドラーのリスト」で、ユダヤ系として一番描きたかった史実を描き上げ、
プライベート・ライアン」で、虐殺系映画の金字塔を打ち立てたから、もう気が済んだのだろうか。
「A.I.」だとか、「マイノリティ・レポート」だとか、
もう、お願いだから製作だけに専念してくれないかなぁ、とため息ばかりの監督さん。


そんな三大問題人物を抱えた映画が、うまくいきっこない。
そう信じながら、それでも初日初回に行ってしまう。
「もしかしたら…」。
そんな一縷の希望を持って、スクリーンを見つめたのだが、不安は的中した。
というか、予想以上にトホホホホホ…
何がしたくて、この映画をわざわざリメイクしたのか、よくわからない。
ID4インデペンデンス・デイ」で、もう十分だよ。
もっと、心理的に攻めてくるなら、これまた「サイン」で十分だし。
H・G・ウェルズの原作に忠実に、ということなんだろうけど、
それにしても工夫がなさ過ぎる。
確かに特撮はすごいけど、いままで観たことがない! みたいなスペシャル感はなし。
人間ドラマを描きたかったらしい形跡は感じられるけど、正直全然ピンとこない。
悪いけど、ガス・ヴァン・サント版の「サイコ」以上に、リメイクの意味が理解できない。


駄作、じゃないとは思う。
それなりに映像はすごいし、ハラハラもする。
トムクルの活躍を観たいだけ、という人には、
今回も〝必要以上の〟ご活躍場面が満載されている。
トムクルとか使わず、もっと趣味に走りまくったB級テイストで撮っていれば、
たぶん、そんなに悪くない、SFパニックスリラーになっていたかもしれない。
だが、その程度だ。
全世界同時公開、とか、スピルバーグ、トムクルの看板使って、
ここまで煽っておきながら、この〝スペシャル感〟不足は、正直あんまりだ。


欠点を挙げていけば、もうきりがない。
たとえば、人間ドラマの部分。
夫婦が離婚し、子ども二人は再婚した妻のもとへ…、というトムクル一家の家族の絆の再生だ。
このトムクルが、ろくに子守歌も歌えないばかりか、
出生時以来抱えている子どものアレルギーすら知らない。
見当違いに父親の権威をふりかざすばかりのロクデナシだ。
これが、事件を通じて何か成長するかというと、別にしない。
結果オーライで、何となく生き残っただけ。(別にネタバレじゃないすよね?)
子供二人も、何か父親への反発を型通り見せてみるが、これまた中途半端。
父子が、エゴ丸出しに反発しあい、
一転パニックに巻き込まれると「自分たちさえ生き残ればいい」みたいに結束する。
で、ぎゃあぎゃあわめいている間に、映画はとっとと終わる。
感想はひとこと「So What?」なのだ。
このどうしようもない家族の物語を通じて、何を感じ取れ、というのか理解できない。
というか、言いたげな部分はわかるが、これじゃ全然ダメだろ、という感じだ。


ついでに、ダコタの悲鳴うるさい。
かましい。早く宇宙人に囚われてしまえ! と思うぐらい感情移入できない。
だいいち、役名も覚えていない。
だって、どう見たって、いつもの〝賢いダコタちゃん〟とまったく変わらないんだもの。
永谷園のお茶漬け、みたいなセーターも見ていて不快だし、
お行儀の悪さたるや、この一家(再婚相手も含め)の家庭環境の悪さばかりが強調される。
それ、何か意味あるのだろうか?


あと、細かい矛盾がらみを挙げるのは、あんまり好きじゃないが、
あまりひどいとついつい、言いたくなる。
何でトムクルだけ、怪光線が当たらなんだ。
主人公だから、というには、あまりにきわどすぎる。
そりゃ、アクション映画で主人公に弾丸は当たらないけど、
あれだけ無防備にしてるトムクルが助かるのは、ご都合主義を越えて、ギャグそのものだ。
その上、宇宙人に捕らわれる際も、トムクルの時だけみんなが助ける。
おまえら、10秒前にちょい役を平然と見捨ててたくせに…
ついでに、電磁波の影響で電気が使えなくなる、という設定があるんだが、
こちらも都合のいい時だけ、なぜか使える。
理論に一貫性がない上、ムリにでも説明をつけるという努力を怠るから、しらけるばかり。


で、オチだってひどい。
ネタバレになるから、細かくは書かないが、
100万年(と、ティム・ロビンスは勝手に言ってる)の間、地球を見張ってきた、
人間より知性の高い生命体が、何でそんなことに気付かないんだ。
子どもでも気付くだろう。そんなことは…


イカ、はしょうがないと思う。
宇宙人といえば、イカとタコ。あとはギーガーのチョイ真似。
それだけ「エイリアン」という作品がすごい、ということにあらためて感心するばかりだ。
それに、イカも予告で見ちゃったから、もう驚かないし。


いいトコを挙げるなら、ティム・ロビンスかな。
どう見ても怪しすぎ。妄想が爆走して、エイリアンより危険な雰囲気を醸し出す。
たぶん、製作者の意図からは外れまくっているはずだが、
トホホ映画のいいスパイスになっていると思う。結果的に、だが。


そのロビンスのセリフに「戦争じゃない、駆除だ」というくだりがあった。予告でもやってるやつ。
つくづく、その駆除、に視点を置いて描いてみるとか、なかったんだろうか。
人間の視点なし。ただただ殺戮。ライク・ア・「プライベート・ライアン」。
だって、人間だってゴキブリとか、害虫(人間にとって、の)にやってるじゃん。
宇宙人だって、人間が邪魔くさいから、駆除しようとしてるんだから、
高度知性体なら、もっと非情に、効率よく、ムシのようにやっちゃうと思うのだが…
まあ、あくまでこれは極端な物言いだけど、
そのくらい視点だとか、描写だとか、もしくは映像だけでもいいから、斬新なものが欲しかった。
いまさらスピルバーグに期待する方がバカなのはわかっているが、
やっぱり、それが残念でならない。
別に、観ていられない映画じゃないが、納得できないのも確かだ。


ありふれた題材を、ありふれた手法で、まあまあの特撮を使って描いた映画。
もちろん、独特のセンスだとか、おもしろい映画を作ってやるぞ!的な工夫なし。
過去に観たさまざまな映画がフラッシュバックし、
「あっちの方が面白かった」というため息に変わる。
誤解を招きかねないけど、
まあ、一年に一回、この映画だけ観るヒトには、ドキドキワクワクハラハラのし通しかも。
だって、知らないヒトには、これでも斬新に映るかも知れないし。
製作者が、それでいい、と思って作ってるなら、
文句言った僕がバカでした。すみません…、と謝るしかないんだけどね。