敷島シネポップで「M:i:III」先々行レイト
お馴染みのシリーズ第3弾。
トム珍の完全な自己愛炸裂映画に終わった2作目から6年、
今作では、TVシリーズ「エイリアス」の新鋭J・J・エイブラムズが、デ・パルマ、ジョン・ウーの向こうを張ってメガホンを取った。
そして、目玉の悪役には「カポーティ」でオスカー獲りたての、フィリップ・シーモア・ホフマンを配し、シリーズ再建がかかる最新作だ。
シリーズ最高傑作の呼び声も高いが、さて、というところ。
ジュリア=ミシェル・モナハンとの結婚を控え、
IMFの訓練教官となったイーサン・ハント=トム・クルーズのもとに新たな使命が下される。
死の商人、デイヴィアンに捕らえられたかつての教え子リンジーの救出作戦。
同僚のルーサー=ヴィング・レイムスとともに、アジトに潜入したイーサンだったが…。
ベルリン、バチカン、ヴァージニア、そして上海。
世界を舞台に、イーサン・ハントの実現不可能なミッションが、再び始まる−
結論から行くと、確かに最高傑作といっていいかもしれない。
TVシリーズへのオマージュをふんだんに盛り込んだ1作目と比べ、
いわゆる「スパイ大作戦」テイストとしては微妙な感もあるが、
単純にサスペンス・アクションとして見た場合、この作品がもっともバランスがいい。
これまでは、デ・パルマ、ジョン・ウーの作家性と、トムクルのエゴがぶつかり合い、
ともすれば、映画としてはギャグの領域に入ってしまっていた感もあるのだが、
今回はトムクルのエゴも、いわゆる作家性もうまい具合に抑えこんでいる。
そりゃ、もちろんトム珍のスタア映画には違いないので、
それなりにトム・スマイルが散りばめてはあるのだが、「Ⅱ」ほど過剰ではない。
トム様の「ありえね〜っ」アクションも、前作と比べれば、かわいいものだ。
脇を固める俳優陣も、豪華さがいい方向で効果をもたらしている。
まずはフィリップ・シーモア・ホフマン。
近年は、「ブギーナイツ」「ハピネス」の変態白デブがよくもここまで…、
という圧倒的な活躍ぶりで、すっかりメジャー級の人になったが、
その何ともいえない粘着質な味わいは、
王道中の王道の娯楽映画でも、独特の雰囲気を放っている。
はっきりいって、けっこう怖い。「ダイハード」のアラン・リックマン級だ。
あの、ブツブツ喋る仕種が、敵にしたくない悪役っぽさをうまく劇画化している。
IMFの上司にも、なかなかの面子を揃えた。
「マトリックス」のモーフィアスことローレンス・フィッシュバーンと、
「あの頃ペニー・レインと」のビリー・クラダップという、渋い俳優二人。
意地悪で、官僚的なモーフィアスには笑ってしまうが、その存在感が絶妙だ。
加えて、1からお馴染みのヴィング・レイムスと、
「ベルベット・ゴールドマイン」「テッセラクト」のジョナサン・リス・マイヤーズ。
いい感じに軽めで、それでいてスピード感あるドラマを引き立てる好演ぶりだ。
演出についていえば、過去2作の大物監督と比べ、
今回のJ・J・エイブラムズは、クセはないけどスピード感と切れがいいと思う。
映画の冒頭は、イーサンがディヴィアンに捕らえられた場面。
ホフマンのねっちょりとした喋りが、いきなり異様な緊迫感をもたらす。
そこから少し時間が元に戻り、あとは一気の展開。
ベルリンでの救出作戦から、ヘリでの空中チェイス、
バチカン市国での大立ち回りに、チェサピーク・ベイ・ブリッジでの大爆発…
トム・クルーズの看板あってこその、豪華なアクションシーンの連続。
しかも、それを無理に引っ張らず、コンパクトに次の展開につなげる。
なるほど、エンタテインメント性におけるセンスを感じさせる、作りになっている。
観終わって思ったことは「何だトム、ちゃんとできるんだね」という感じか。
大丈夫?とのこちらの不安を、杞憂に変えてくれたといっていい。
満足度はこのテの娯楽映画としては、かなり高めの会心の1本。
ケイティ・ホームズとの結婚騒動で、
すっかり奇行ばかりが取り上げられるようになったトムだけど、
まあ何とか立ち直りのきっかけにはなりそうな気がする。
これからもシリーズ続きそうだが、
今回の演出・トムのエゴ制限でいけば、まだまだ期待ができそうだ。