敷島シネポップで「M:i:III」先々行レイト

mike-cat2006-06-24



お馴染みのシリーズ第3弾。
トム珍の完全な自己愛炸裂映画に終わった2作目から6年、
今作では、TVシリーズ「エイリアス」の新鋭J・J・エイブラムズが、デ・パルマジョン・ウーの向こうを張ってメガホンを取った。
そして、目玉の悪役には「カポーティ」でオスカー獲りたての、フィリップ・シーモア・ホフマンを配し、シリーズ再建がかかる最新作だ。
シリーズ最高傑作の呼び声も高いが、さて、というところ。


ジュリア=ミシェル・モナハンとの結婚を控え、
IMFの訓練教官となったイーサン・ハント=トム・クルーズのもとに新たな使命が下される。
死の商人、デイヴィアンに捕らえられたかつての教え子リンジーの救出作戦。
同僚のルーサー=ヴィング・レイムスとともに、アジトに潜入したイーサンだったが…。
ベルリン、バチカン、ヴァージニア、そして上海。
世界を舞台に、イーサン・ハントの実現不可能なミッションが、再び始まる−


結論から行くと、確かに最高傑作といっていいかもしれない。
TVシリーズへのオマージュをふんだんに盛り込んだ1作目と比べ、
いわゆる「スパイ大作戦」テイストとしては微妙な感もあるが、
単純にサスペンス・アクションとして見た場合、この作品がもっともバランスがいい。
これまでは、デ・パルマジョン・ウーの作家性と、トムクルのエゴがぶつかり合い、
ともすれば、映画としてはギャグの領域に入ってしまっていた感もあるのだが、
今回はトムクルのエゴも、いわゆる作家性もうまい具合に抑えこんでいる。
そりゃ、もちろんトム珍のスタア映画には違いないので、
それなりにトム・スマイルが散りばめてはあるのだが、「Ⅱ」ほど過剰ではない。
トム様の「ありえね〜っ」アクションも、前作と比べれば、かわいいものだ。


脇を固める俳優陣も、豪華さがいい方向で効果をもたらしている。
まずはフィリップ・シーモア・ホフマン
近年は、「ブギーナイツ」「ハピネス」の変態白デブがよくもここまで…、
という圧倒的な活躍ぶりで、すっかりメジャー級の人になったが、
その何ともいえない粘着質な味わいは、
王道中の王道の娯楽映画でも、独特の雰囲気を放っている。
はっきりいって、けっこう怖い。「ダイハード」のアラン・リックマン級だ。
あの、ブツブツ喋る仕種が、敵にしたくない悪役っぽさをうまく劇画化している。


IMFの上司にも、なかなかの面子を揃えた。
マトリックス」のモーフィアスことローレンス・フィッシュバーンと、
あの頃ペニー・レインと」のビリー・クラダップという、渋い俳優二人。
意地悪で、官僚的なモーフィアスには笑ってしまうが、その存在感が絶妙だ。
加えて、1からお馴染みのヴィング・レイムスと、
ベルベット・ゴールドマイン」「テッセラクト」のジョナサン・リス・マイヤーズ
いい感じに軽めで、それでいてスピード感あるドラマを引き立てる好演ぶりだ。


演出についていえば、過去2作の大物監督と比べ、
今回のJ・J・エイブラムズは、クセはないけどスピード感と切れがいいと思う。
映画の冒頭は、イーサンがディヴィアンに捕らえられた場面。
ホフマンのねっちょりとした喋りが、いきなり異様な緊迫感をもたらす。
そこから少し時間が元に戻り、あとは一気の展開。
ベルリンでの救出作戦から、ヘリでの空中チェイス
バチカン市国での大立ち回りに、チェサピーク・ベイ・ブリッジでの大爆発…
トム・クルーズの看板あってこその、豪華なアクションシーンの連続。
しかも、それを無理に引っ張らず、コンパクトに次の展開につなげる。
なるほど、エンタテインメント性におけるセンスを感じさせる、作りになっている。


観終わって思ったことは「何だトム、ちゃんとできるんだね」という感じか。
大丈夫?とのこちらの不安を、杞憂に変えてくれたといっていい。
満足度はこのテの娯楽映画としては、かなり高めの会心の1本。
ケイティ・ホームズとの結婚騒動で、
すっかり奇行ばかりが取り上げられるようになったトムだけど、
まあ何とか立ち直りのきっかけにはなりそうな気がする。
これからもシリーズ続きそうだが、
今回の演出・トムのエゴ制限でいけば、まだまだ期待ができそうだ。