テアトル新宿で「オーバードライヴ」

ポスター見つかりませんで…


映画を観に行く前に書店に寄ると、ジェフリー・ディーヴァーの新作発見。
リンカーン・ライム・シリーズの最新作「魔術師 (イリュージョニスト)」。
&新潮社クレストブックスの新刊「ペンギンの憂鬱」。
ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)表紙絵えらいかわいい♪
どちらも待望の小説。うう、うずうずする。
その興奮のあまり、たぶん出てるはずの「本の雑誌」最新号を買うのを忘れる。
西原理恵子いうところの〝鳥頭〟ぶりを、またも存分に発揮してしまった。


で、本日の映画。伊勢丹横・テアトル新宿で「オーバードライヴ」。


あらすじはすごいぞ、過去に3000本は作られている、伝統的スポ根。
バンドを突然クビになったギタリスト、弦=柏原収史が、酔って拉致され、
連れてこられたのは、三味線の本場、津軽
伝説の三味線アーティスト(芸者じゃないし、何というの? 演奏家?)の
孫娘、晶=杏さゆりの色香にだまされ弟子入り、三味線の道を究めんとする。
そして、お約束のヘンなライバル登場、決着はアルティメット大会にて、みたいな。


あまりに、ありふれた話。でも、いいの。〝ちゃんと〟作ってくれていれば、と思う。
題材やロケーション、登場人物や台詞、音楽などに愛情のこもった映画は、
どんなに観たことあるような映画でも、観る人を楽しませてくれると思う。
個人的には、最近だと「シャンプー台の向こうに」が、秀逸だったと思う。
アラン・リックマン演じる伝説の床屋さんが登場する、ジョシュ・ハートネット主演の、
床屋さんバトル・スポ根映画。リックマンのステップ(ヘアカットになぜ?)が最高だった。

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というわけで、そういうポイントでのみ、映画を観ることにしてた。
だから、元アイドルグループ(DREAMって有名なんですか?)の、
阿井莉沙というコ(このコも知らないんですが…)がやってるラップの稚拙さとか、
柏原収史ら若手勢の、幼稚園のお遊戯状態の演技は、一応不問にする。
セットとか、おカネなかったんだろうけど、かなり雑だし。
というか、ここらへんをもう少し何とかしてれば、もっといい映画になったのに…
というのは、最後に書くべきだったかも。


というわけで、おおむね楽しく、面白いバカ映画だった。
津軽の描写がすごい。
ここは秘境かよ、と思っちゃうくらいだ。
完全に開き直って、漫画チックなまでにデフォルメされた世界になってる。
津軽の人、怒らなかったのかな、と思うくらいすごい。
三味線の大家五十嵐五郎=ミッキー・カーチスの家なんか、水車小屋。
その地下は深く深く掘られ、何だか地下基地みたいになってる。


その上、文化、娯楽はすべて三味線に集約される。
だいじょうぶか? 津軽。別にいいけど。
とにかく、勝負はすべて三味線で。
麻雀漫画の「だったら、麻雀で勝負だ!!」の世界と同じだ。
弾いているだけで、相手が吹っ飛んだりするし。おいおい。
ジミー・ペイジばりのダブルネック三味線が出てきたり、
エディ・ヴァン・ヘイレンやヨー・ヨー・マとかも拉致されてたことになってるし。
あっ、そういうトリヴィアめいたこと、ちゃんとパンフに載ってた。えらい。
十字路で悪魔に魂を売った、ロバート・ジョンスンの話とかも、
使ったりしてて、なかなか笑わせる。えらい違いだけど。


柏原収史の演技そのものは観られたものじゃないけど、
いい雰囲気は出ていたんじゃないか、と。
たぶん、演技でも何でもないと思うけど、いい感じに軽い。
そのアホっぷりが、映画のテイストと絶妙のハーモニーを醸し出す。
こういうアホをそのまんま演じられる俳優は、好感持てるかも。
賀集俊樹、鈴木蘭々杏さゆりらの稚拙な演技も、
ミッキー・カーチス小倉一郎ら、脇役陣の存在感がある程度カバーしている。
というか、蘭々すごいひさしぶり、ご健在なようで。


そういうオバカを極める一方で、三味線シーンはかなりすごい。
僕は全然知らなかったが、出演の新田兄弟、木下伸市という方々は、
その世界ではすごいひとだそうだ。道理で、魂のプレイだったな、と。
最後の決め手のプレイが、
〝あの曲〟というのは、どうなのよ? とも思ったけど、
書いちゃうとこれから観る人がつまんないと思うから、どの曲かは書かない。


出来自体は、まあまあの域を越えない。
こういう映画では、わかっていても必ずどこかでほろりとくる僕の涙腺だが、
きょうは一度もほろりとこなかった。これはちょっと減点。
もう少し、泣かせを大事にすればよかったのに。
全般的に、そう悪くはなかったとも思うだけに、もったいない。
ま、愛すべき〝もう少し頑張りましょう〟映画、かな。どういう評価なんだか…