敷島シネポップで「ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ」

mike-cat2005-05-16



最初にネットでポスター観た時は、かなり期待したものだった。
紅い文字で〝COME OUT COME OUT WHATEVER YOU ARE〟
出演もロバート・デ・ニーロダコタ・ファニング
エリザベス・シューファムケ・ヤンセンと、「おお、すごい!」な布陣。
早く公開しないかな、と楽しみにしていた。


だが、日本公開版の予告を観た時、微妙に期待感に変化が現れた。
「もう、いいかい まぁだだよ。もう、いいかい ……もういいよ」
何だかセンスないなぁ… と不安がよぎる。
一度不安がよぎり始めると、もう歯止めがきかない。
デ・ニーロ&ファニングのコンビにも不安が生じる。
名優と天才子役の組み合わせって、間違えると…。
それにデ・ニーロのこういう映画っていつ以来だろう?
フランケンシュタイン」か「ケープ・フィアー」?
ううん、最近「さすがデ・ニーロ!」と思ったのって、
そういえば、なかばセルフパロディの「アナライズ・ユー」ぐらい。
ダコタちゃんだって、一躍脚光を浴びた
「I am Sam アイ・アム・サム」以上の作品はあったかなぁ、と思い立つ。


それでも、面白いはず!、と信じて劇場に出向く。
大丈夫なはず! と信じてスクリーンを見つめる。
で、どうだったか?
始まって10分程度で、不安が的中しつつあることを悟る。
演技合戦。しかも、オーバーアクトだ。
「デ・ニーロの演技観た? デ・ニーロの演技、ここポイントだぞ」と、
強く語りかけてくるような、デ・ニーロの過剰な存在感。
「ダコタの演技、素敵でしょ? ダコタ、ここの表情頑張ったの」と、
こびるように訴えかけてくるような、ファニングの過剰な作為的演技。
このふたり、映画の完成度とか、絶対考えてないんだろうな。
どちらも、いいたいことはただひとつ「自分を観て♪ 観て♪」に思える。


これが、ハートウォーミングなドラマでなら、それも生きることがあるだろう。
しかし、この映画はサスペンスというか、ホラーというか…
確かに、微妙な心理描写とかが必要な部分もあることは認めるが、
それにしては、この映画あまりに作りがB級過ぎる。
妻、そして母を自殺で失った親娘が、ニューヨークの郊外へ移り住む。
心を閉ざしていた娘エミリーが、そこで作った友達は、心の中の架空の友達チャーリー。
母を奪った父を憎むエミリーの気持ちを、チャーリーが〝行動〟で示していく。
プロットそのものは、まあ比較的オーソドックスだが、悪くはない。
ただ、もし心理描写をメインに置くなら、もっと重厚に作らないと、…だ。
中途半端にホラー的仕掛けも使ってみるのだが、こちらはタイミングが甘い。
かといって、鬱屈したこどもの心理とかを描くには、脚本が単純過ぎる。
結局、ドラマとしても、ホラー・サスペンスとしても中途半端、という結果に陥る。


こうして考えるとファニング自体もミスキャストかもしれない。
母を失って感情をコントロールできなくなった子供を演じるのには正直、
その瞳が必要以上に老成しすぎているし、
その利発なイメージが、傷ついた子供が取る数々の行動と一致しない。
もう少し、子供らしい子供なら、いやがらせとも取れる行動が、
心の傷に起因する、と何となく納得できるのだが、
彼女の場合、必要以上に頭がよさそうに見えるだけに、悪意とも取れるのだ。
だから、自分の心の傷を理由に、傲慢に振る舞うエミリーに、嫌悪感が湧いてしまう。
これを受け止めるデ・ニーロも、
必要以上に苦悩を前面に押し出すから、もう始末に負えない。
映画半ばにして、もう退屈モード。102分の上映時間が2時間半にも感じられてくる。


これで、サスペンスそのものの質が高ければいいのだが、これも、…なのだ。
オチをばらしてもしかたないので、詳しくは書かないが、
オチそのものはもともとそんな多くのパターンもないので、しかたないとする。
だが、そのオチになるなら、序盤から説明のつかないことが多すぎる。
ちゃんとフローチャートを作って、映画作ってるのか?と訊きたくなる。
こういうオチを使うなら、登場人物たちのさまざまな行動が、
最終的にそのオチに集約されなければいけないのだが、
この映画には説明不能の設定や場面が多すぎる。
そのくせ、中途半端なミスリードも使うから、よけいに話がおかしくなる。
そりゃ、「シックス・センス」だって、人によってはストーリーに破綻がある、
というくらいだから、言い出したらきりがないのは承知だが、
やっぱりこの映画は、明らかにその許容範囲を越えている。
制作側としては、エンディングの最後の最後で、
すべての説明をつけたつもりでいるのは承知しているけど、それでも、ね…。


まあ、この映画の見どころは、
歳を重ねるごとにきれいになるエリザベス・シューだろか。
名作「リービング・ラスベガス」の頃と比べても、ひときわ美しい。
それでいて、胸の谷間を強調した姿なんか見せるから、
妻を亡くしたばかりのデ・ニーロが、あっという間に擦り寄っていくのも、ムリはないかも。
ええっと、ほかは見どころ、あんまりない、かな。
結論としては、まあ駄作に入るんだと思う。
だって、映画の途中で思ったことが「もう、いいよ」だったから…