梅田ナビオTOHOプレックスで「ドッジボール」

mike-cat2005-05-17



原題は〝Dodgeball: A True Underdog Story〟
〝念願の〟1本だった。ベン・スティラーの映画は、
監督作品の「リアリティ・バイツ」「僕たちのアナ・バナナ」などから、
「ミート・ザ・ペアレンツ」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」などのコメディ、
そして〝低偏差値〟などと揶揄されることもある
メリーに首ったけ」「ズーランダー」までどれも、とても好きだ。
で、特に好きなのが、いわゆる〝低偏差値系〟。
オーウェン・ウィルソンとともに、徹底的にバカらしさを極めた「ズーランダー」とか、もう最高だ。
だから、「スタスキー&ハッチ」のリメイクとか、すごく楽しみだったのに、
日本では未公開、当然のようにビデオスルーにされてしまった。
この「ドッジボール」も、ネットで予告観た時には、間違いなくビデオスルーかな…、と。
まあ、スポ根コメディ、というわかりやすい形があってか、晴れて劇場公開となったんだろう。


映画のプロットはけっこうシンプル。
倒産直前のスポーツジム〝アベレージ・ジョー〟を経営するピーターは、
社会のあぶれもの=ルーザーのたまり場となっている、このジムの仲間をこよなく愛している。
しかし、隣の金満ジム〝グロボ・ジム〟の経営者で、変態ナルシストのホワイトは、
〝アベレージ・ジョー〟の敷地を駐車場にすべく、銀行を通じてピーターを攻撃する。
月末までに5万ドルを支払わないと、ジムを取り上げられるピーターは、
〝ジョー〟の負け犬仲間とともに、賞金目当てにラスベガスのドッジボール大会へ。
それを聞きつけたホワイトも、強力チームを編成して、大会に割り込んでくるのだった。


しかし、この映画、一応ストーリーラインはスポ根コメディの形は取っているが、
徹底的に〝おバカ〟の精神が貫かれた、一筋縄ではいかない作品だ。
ふつうのスポ根コメディなら、
笑いながらも感動の涙につながるストーリーラインを尊重して、ギャグが散りばめられるんだが、
この映画の場合、
感動の涙につながるようなシーンでは、こちらの涙腺を必ずと言っていいほど裏切る。
感動より、ひたすら繰り出される、ベタなドタバタとブラック・ジョークを優先させるのだ。
このクドい感覚、まさにベン・スティラーの真骨頂だと思う。
これが、かつては若者新世代〝ジェネレーションX〟を描いた、
「リアリティ・バイツ」の才人なんだろうか、と疑うほど、もう徹底したクドさなのだ。


で、ここまで小理屈を並べておいて何なんだが、
このベン・スティラー映画(低偏差値系)は、そういう小理屈を抜きに、
肩の力を抜き、脳みそを弛緩して、そのクドい世界に浸る。
時にユルいギャグもあるが、気にしない。
小難しく考えず、こちらもユルく受け止めていけば、もう次第に笑いが止まらなくなる。
もちろん、スラングを含めた英語だとか、アメリカ大衆文化だとか、
次々現れる微妙なカメオ出演陣とか、そこらへんの知識もあればあるほど、より笑えるが、
それがなくとも、さほど心配ない。
往年の〝ドリフ〟を凌駕する、ひたすらベタな笑いだけでも、間違いなく最高だ。
ちなみに、カメオはデ×ッ×・ハ×セ×ホ×、ウ×リ×ム・×ャ×ナー、×ャ×ク・×リ×…
ベン・スティラーの何とも言えない趣味を表しているようで、また興味深い。


これは僕も知らなかったのだが、
ヒロインのケイト役で登場するクリスティーン・テイラーは、ベンの実生活の奥さん。
その奥さんと、アホオトコ、ホワイトのカラミは、もうかなりすごい。
よくもまあ、実の妻相手に…、とあきれるやら、笑ってしまうやら。
ちなみにこのテイラー、「ズーランダー」で知り合ったそうだ。
ううむ、覚えていない、見直さなきゃ…


ほかにも、あのガス・ヴァン・サント版「サイコ」でノーマン・ベイツを演じた、
ヴィンス・ヴォーンもあの悪役面を引っ提げて、ピーター役を好演している。
ベン・スティラーの超ハイテンションを受け止める、
抑えた演技がなかなかいいバランスを醸し出している。
ほかのルーザー組でも、ジーパーズ・クリーパーズ」に出てたジャスティン・ロングが、
チアリーダーを目指していたへなちょこ高校生ジャスティン役でいい味を出している。
「MIB」で、ウィル・スミスやトミー・リー・ジョーンズの上司役やってたリップ・トーンも◎。
その若い頃が、何でハンク・アザリアなのか、というのも含め、これも笑える。


だんだん、ネタバレに近づいてきたので、これぐらいにしておくが、
まあ、そんなこんなで、とにかく面白いのだ。
〝低偏差値〟とバカにする前に一度、全身脱力して観てみれば、その価値がわかる。
まごう事なき〝傑作〟だ。迷うことなく、断言したい。
まあ、「ズーランダー」観て苛々した、という人には勧めない。
(というか、東京では銀座シネパトス公開のこの映画、観てる人少ないだろうな…)
ウッディ・アレンの映画でしか笑わない、という人にももちろん勧めない。
(僕はあれもとても好き。笑いは決して一義的なものじゃないはず)
だけど、普通にコメディも楽しめる人になら、大笑いできること請け合いだ。
みなさん、観に行きましょう。「ドッジボール」。
そして、ベン・スティラー映画のビデオスルーを一本でも阻止しよう。


以上、日本ベン・スティラー向上普及委員会(仮称)からの広報広告でした…