TOHOシネマズなんばで「舞妓 Haaaan!!!」

mike-cat2007-06-19



〝京都は日本の宝どす。〟
京都の花街を舞台に、舞妓への愛憎を描いた、
宮藤官九郎脚本の大・大・おバカ・コメディだ。
実はこのクドカン、ドラマも映画も初めてだが、
出ている俳優もまともだし、(いい意味で)くだらなそうで期待大。
〝男の究極の夢 舞妓と野球拳〟
個人的にはそういう妄想は抱いていないが、
映画のネタとしては、かなりいいトコを突いていると思う。


東京に本社を持つ食品会社に務める鬼塚公彦は、
舞妓に魅せられ、舞妓との野球拳を夢見る熱狂的舞妓マニア。
念願の京都支社への転勤を命じられた鬼塚は、
同僚で恋人の富士子にあっさりと別れを告げ、夢の地へ向かう。
しかし、鬼塚の前に立ちはだかるのは、「一見さんお断り」の高き壁。
仕事での成功、そして花街デビューを目指し、新商品開発に燃える鬼塚。
一方、鬼塚に捨てられた富士子は、忘れられない彼を追って京都へ―


くっだらない。本当にくっだらない、そしてやたら笑える物語だ。
花街の文化や掟を紹介しつつ、繰り広げられるストーリーは、
荒唐無稽という言葉では表現できないくらい、ムチャクチャのオンパレード。
コメディとはいえ、あり得なさすぎる展開の連続に、
序盤はちょっと引いてしまうほど、本当に「ありえねえ」なストーリーである。


しかし、そのハイテンションなおバカ話も、
そのまんまのペースでグイグイと押しこまれると、何だか心地よくなる。
阿部サダヲ堤真一による、超ハイテンションな演技が、
そんなバカバカしさをさらにヒートアップさせ、不思議な説得力を醸し出す。
気づいてみれば、そのくだらなさ、バカバカしさに笑いがもれるのだ。


それにしても、阿部サダヲ堤真一はすごいのだ。
演技に戸惑いがまったく感じられない。徹底的にバカを演じきる。
有無をいわせないような怒濤のパワーに、ただただ圧倒される。
平気で高校生役なんかも喜々として演じていて、もう笑うしかない。
おそらく、この2人の存在なしには、この作品は成り立たないはずである。


もちろん、柴咲コウもいい。すごくいい。
あの捨て鉢な感じと、「公ちゃん、かっこいい」とつぶやくズレ切った感じ、
そして、ローテンションで押し切る主題歌と、とことんバカを演じきる。
適度な安さと、凜とした美しさの使い分けも相変わらず絶妙。
映画にドラマに歌にCMに、これだけの露出があっても、
こうやって新鮮な柴咲コウを出すことができるのは、つくづくすごいと思う。


難をいえば、やはり演出がところどころテレビドラマチックなところか。
監督は「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」水田伸生
日テレのドラマを手がけてきた人物らしいが、
やはり説明過多なテレビ演出の悪いクセがどころどころに出てしまう。
俳優たちのあれだけの演技があれば、
よぶんなCGや説明カットはかえって邪魔なのだが、そこらへんが粋じゃない。


バナナマンのオットセイの方とか、テレビタレントの露出も、やはり不要だろう。
最近の邦画の話題作にしては、控えめな方だが、
スポットで笑わせてくれるまともな俳優の登場(北村一輝とか)はともかく、
終盤で出てくる人気俳優なんかも、別に作品上はまったく必要ない。
あれで観客が喜んでいると思ったら大間違いで、
こういうサービスはあくまで粋にやってこそ、という部分がわかっていない。


ただ、それも前述した通りの俳優たちのパワーの前では小さな瑕疵に過ぎない。
最初から最後まで、そのバカバカしさに笑いは止まらない。
えっ、それでいいわけ? 的なトンデモなラストまで、
(いい意味で)クドいセンスが炸裂する、トンデモ&おバカな傑作。
邦画は年に数本しか観ないが、これは間違いなくお勧めの1本だと思う。