恵比寿ガーデンシネマで「モーターサイクル・ダイアリーズ」

お勧め度大! ですね。



平日の午後イチの回。えらく混んでた。というか、満席。
ゲバラと同時代を生きたっぽい年代の人多数の様子だ。
やはり、特別な名前なんだろう。僕ですら、名前だけで多少気持ちが動く。


しかし、僕の目的はガエル・ガルシア・ベルナルかな。
雰囲気を持った役者だと思う。すごく好き。でも、ゲイじゃないよ。
アモーレス・ペロス」、是非観て欲しい。絶対ファンになること請け合いだ。

アモーレス・ペロス ― スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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映画は、若きチェ・ゲバラのたどった、南米大陸縦断の旅を描く。
キューバ革命の偉大なる指導者がたどった、革命の原点。
と書くと、すごく生臭い感じもある。
だが、〝語るがための〟政治の色は、まったくない。
為政者に対する服従、という意味でのノンポリじゃない。
あの主義がどうの、この主義がどうの、という概念上のお遊びではない、
どう生きるべきか、のレベル、つまり生きる道としての政治の色はきっちりある。
こうして書いてると、自分でもちょっと書き分け難しいかも。
わかりにくくて、申し訳ない。表現力不足をいま、実感した。


で、本題に戻る。
医学生として恵まれた生活を送っていた、ブエノスアイレスを発ち、
チリを南下、その後ベネズエラに向けて北上を続ける旅。
そこで若きゲバラが体験したさまざまな出来事が、
彼を変え、その思想を、その信念を創り上げていく。
雪に埋もれたチリ南方で、恋人と過ごした甘いひととき、そして別れ。
かつて南米の中心だった、インカ帝国の残像との遭遇。
ペルー、サンパブロでのハンセン病施設での人々との出逢い。
旅を終えたゲバラが、こう振り返る。
「南米放浪の旅は、想像以上に僕を変えた。
 少なくとも、昔の僕ではなくなっていた」。
成人への通過儀礼とか書くと陳腐だが、
普遍的な表現でいえば、やはりゲバラの成長の旅でもある。


だからといって、説教くさい映画化というと、それも全然だ。
ゲバラ、という人物について一切問わなくても、感動できる、
美しく、壮大なロードムービーといっていい。
荒涼とした光景の中を、バイクが砂ぼこりを立てて走っていく。
この映画に限らず、映画の至福を感じさせるシーンのひとつだが、
「モーターサイクル〜」の美しさは、かなり格別の感がある。
監督は「セントラル・ステーション [DVD]」のウォルター・サレス。
スクリーンには、南米への郷愁と、熱い想いがほとばしる。
特に、クスコやマチュピチュのシーンなんて、特別な理由なしでもグッっと胸に詰まる。
ここらへんの映像だけで、十分劇場に足を運ぶ価値あり、と断言したい。
そして、ハンセン病の施設でのシークエンス。
革命の士、ゲバラの人間そのものがかいま見えるようで、ひたすら胸を打つ。


ゲバラの旅のパートナー、アルベルト・グラナードの存在、
そしてそれを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナの演技も、心に響いた。
いい感じに俗物で、いい感じに熱い。
「これは偉業の物語ではない。
 同じ大志と夢を持った2つの人生が、しばし併走した物語である」。
ナレーションだけでも泣いちゃいそうだ。しつこいけど、すごくいい。


いい映画を観ると、しばらく興奮が冷めない。
それがロードムービーなんかだと、けっこう危険だ。
放浪したーい! と、できもしないクセに熱い想いがたぎる。
この映画を観て、ひさしぶりに放浪への憧れを思い出した。
いや、近く旅行には行きますけどね。
香港じゃ、放浪とはあまりにかけ離れてるかも。
それも目的は、飲茶&甘味だったりするし(笑)
ま、それが僕の本質だから、ヘンな幻想は映画だけにしておくことにする。
ホントに早いな…、あきらめるの。