MOVIX八尾で「アドレナリン」

mike-cat2007-07-10



〝心臓に仕掛けられたのは死への時限装置。
 このスナイパー、アドレナリンを出し続けないと 即、死亡。〟
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」
「トランスポーター」ジェイソン・ステイサム主演による、
ノンストップのクライム・アクション&サスペンス。
アドレナリンを出し続けないと即死亡、
のプロットが光る、この夏期待の作品、だった。


シェブ・チェリオスは、LAを本拠地にする凄腕の殺し屋。
香港マフィアのボス暗殺をめぐり、トラブルに陥ったチェリオスは、
中国系マフィアが使用する、特殊な毒を注射されてしまった。
それは、アドレナリンを出し続けないと、毒の作用を防げないという厄介な代物。
復讐のため、そして生きのびるため、
チェリオスはLAを大騒乱に巻き込む大暴走を始める―


トランスポーターのジェイソン・ステイサムと、絶妙のプロット。
黙っていても傑作になるはず、と、大きな期待をかけていた。
だが、実際の作品は、突き抜けた爽快感に欠ける、期待外れの作品となった。
ステイサムも、プロットも、魅力的だし、
輝いているのは確かなのだが、本当にただ、それだけ、なのである。
その2つの魅力にだけ頼り、脚本を練るのを怠ったという印象がかなり強い。
生命線となるアドレナリンの源泉を、
必要以上にバイオレンス描写に求めるなど、脚本の甘さがやたらと目立つのである。


監督・脚本はCM畑出身のマーク・ネヴェルダインブライアン・テイラー
この作品が、長編映画のデビュー作となる2人だ。
テイラーがリチャード・ギア主演の「プロフェシー」の視覚効果を担当するなど、
ビジュアル面ではなるほど、なかなかの手腕を見せていると思う。
ハンディカメラを駆使した躍動感や、独特の派手な仕掛けはやはりすごい。


そして、ひとつひとつのシーンを取り上げていけば、面白いシーンは少なくない。
しかし、どうにも作品全体のバランスが悪いのである。
主人公のチェリオスのキャラクターは、時に必要以上に暴力的だし、
いわゆるモラル的な側面であまりにも感情移入しづらい部分が多すぎる。
だから、突き抜けたバカバカしさや、悪のヒーロー的な楽しさが感じられない。
むしろ、それでいいわけ? 的な、げんなり感が常につきまとってしまうのだ。
脚本さえもっとしっかりしていれば、もっともっと面白くなるはずなのに、
ラストに近づけば近づくほど、破綻したストーリーは、観るものの興奮を阻害していく。


それでも、そこそこの映画に仕上がっているのは、やはり
立っているだけでサマになる、ジェイソン・ステイサムの魅力だろうか。
まあ、エイミー・スマート「ロード・トリップ」「バタフライ・エフェクト」)演じる、
恋人のイヴなんかも、なかなか悪くない感じである。
つくづく、もっと脚本を、ストーリーを丁寧に作っていれば、と悔やまれるのだ。
可能なら、プロットとキャストはそのままに、
監督と脚本をほかの人に任せて、リメイクしてくれれば、と思ってしまう。
せっかく、面白い映画になるはずだったのに…、とぼやきは止まらないのだった。