ことし上半期の映画&本を振り返る

何と、もう7月になってしまう。
2006年も、もう後半に入ってしまうのだ。
歳を重ねていく毎に、時間の経過が早くなっていくきょうこの頃…
とはいえ、帰ってこない時代を懐かしんでいても始まらないので、
せめてこの半年、何を観て、何を読んだか、を振り返ってみることにする。


まずは映画。
新年早々のデジタルリマスター版「ニュー・シネマ・パラダイス」から、
上半期屈指の駄作「ウルトラヴァイオレット」まで、ここまで劇場で観た映画は45本。
年100本を目標としている以上、明確に不足だし、
気持ち的にもだいぶもの足りない気もするのだが、
まあ大阪での公開事情を考えれば、こんなものだろうか、という気もする。


で、ことし上半期のマイベスト5作品を選んでみた。
1.「ナイロビの蜂

2.「プロデューサーズ

3.「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」

4.「ブロークバック・マウンテン

5.「ミュンヘン

次点.「クラッシュ」

ナイロビの蜂」は、まあ文句なし、といったところ。
フェルナンド・メイレレスによる、叙情的な演出、
幻のように現れるレイチェル・ワイズの凜とした美しさ、
失われた愛を探し、さまよい歩くレイフ・ファインズのうつろな視線、
そしてひたすら壮大で圧倒的な、アフリカの光景。
まさしく映画らしい映画、という魅力にあふれた作品だった。


プロデューサーズ」も、イカしたバッドテイストのミュージカル。
ネイサン・レインマシュー・ブロデリックユマ・サーマンらが創り出した、
そのハッピーな世界は、たぶん何度でも見返すことになるだろう傑作だ。


ウォレスとグルミット」もシビれまくった。
洒落たギミックと、小粋なジョークに満ちた、パーフェクトワールドは、
観るものを100%幸せにしてくれる、至高のエンタテインメントだと思う。
そして「ブロークバック・マウンテン」の美しさ、
ミュンヘン」の圧倒的な迫力、「クラッシュ」の奏でる哀切…
つくづく映画の楽しさを味わわせてくれたな、という作品ばかり。


もちろん「グッドナイト&グッドラック」や「ウォーク・ザ・ライン
ホテル・ルワンダ」もよかったし、「ピンクパンサー」のコテコテぶりも捨てがたい。
邦画なら「嫌われ松子の一生」が本当に素晴らしかったと思う。
全般的にはいまいちな映画も多かったが、
一方で〝当たり〟の作品も多かった半年だった気がする。


で、本である。
山本幸久「笑う招き猫」から始まって、光原百合「銀の犬」までの98冊。
こちらも数的にはまずまず、といったところだろうか。
って、数の問題じゃないんだが…
ことし上半期で初めて手を出し、なおかつハマったのは、
村上春樹に米沢穂信、井上夢人岡嶋二人といったあたり。
村上春樹なんて、つくづく何で今まで…という感じではあるのだが…


しかし、上半期のベストを選んでみると、あらまいつもの名前ばかり。
別に偏愛作家のばかり集めたつもりはないのだが…
1.小川洋子ミーナの行進
ミーナの行進
2.絲山秋子沖で待つ
沖で待つ
3.カズオ・イシグロわたしを離さないで
わたしを離さないで
4.森絵都風に舞いあがるビニールシート
風に舞いあがるビニールシート
5.フランクリン・フォア「サッカーが世界を解明する
サッカーが世界を解明する
次点.エリック・ラーソン悪魔と博覧会
悪魔と博覧会


小川洋子のには、完全にやられてしまったのだ。
あの懐かしい雰囲気、極上の優しさに包まれた世界、
そして、謎めいた物語の中に潜む、小川洋子一流のひそやかな悪意…
これはまさしく小説の愉悦、といっていい傑作だったと思うのだ。


絲山秋子芥川賞受賞作も、これまたシビれる1冊だった。
何度も何度も読み返したい、忘れ難い作品2編で、絲山秋子が満喫できる。
猥雑さと儚さ、淡泊と濃厚がものの見事に混ざり合う傑作だった。


カズオ・イシグロの作品も、凄みすら感じさせる作品だったし、
森絵都は、またも懐の深さを見せつけられたような印象だ。
フォアのノンフィクションも、W杯便乗のサッカー本とは大きく違う、必読の1冊。
ラーソンも19世紀末のシカゴを生き生きと甦らせてくれる手応え十分の傑作だった。


選びたかったのに選びきれなかった作品ももちろんある。
読んだばかりの光原百合銀の犬」は、物語の魅力にあふれていたし、
三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」も最高に楽しかったし、
川上弘美の「夜の公園」も味わい深かったし、
藤野千夜主婦と恋愛」はその乾いた感じがたまらなかった。


レベル的にはかなり満足のいく本にたくさん出逢えた上半期。
このペースで、後半6カ月も楽しい本に出逢うことを祈って、きょうはおしまい。