ジャック・リッチー「ダイアルAを回せ (KAWADE MYSTERY)」

mike-cat2007-11-24



〝殺し屋稼業も楽じゃない〟
クライム・マシン (晶文社ミステリ)」「10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)」の、
ジャック・リッチーによる最新邦訳短編集。
〝互いの殺人計画を練る夫婦、
 謎の行動を繰り返す爆弾男。
 夜の探偵カーデュラも登場!
 偉才リッチーの傑作クライム・ストーリー15篇。〟
ブラックでシニカル、そしてとびきりシャープな味わいに、
思わずニヤリとしてしまうこと、請け合いである。


冒頭の「正義の味方」
ショウビズを取り仕切る大ボスと、そのボディガードの物語は、
そのあ然とするような結末で、読む者はもうその世界に浸り込む。
そして「政治の道は殺人で」で繰り広げられる、
殺し屋とその依頼人たちの駆け引きは、あくまでブラックなテイストだ。
「いまから十分間」も、名人芸ともいえるツイストに、うならせられる。


ルーマニアトランシルバニア地方の、あの伯爵を思い起こさせる、
夜の名探偵、いや、夜しか働かない迷探偵カーデュラも3編に登場。
かのロビン・ヨーントが活躍していた、黄金時代のミルウォーキー・ブルワーズを舞台に、
カーデュラが活躍する「カーデュラ野球場に行く」などもうれしい1編だ。


これまた迷推理が?冴える?、
ヘンリー・S・ターンバックル部長刑事ものは4編。
訳者あとがきによると、「グリッグスビー文書」は、
シリーズの原点ともいうべき作品とのことらしい。
独特の余韻を残す、その結末はやはりリッチーならではといえそうだ。


そんなこんなで、どれもじっくり読んでいきたい、珠玉の15編。
小粋なテイストを、ひとつひとつ味わうのが楽しい1冊である。