横山秀夫「深追い (新潮文庫)」
〝横山ミステリーの最高峰!〟
警察小説の旗手による、7編の短編集。
〝ある警察署に勤務する7人の男。
彼らの人生を変えた7つの事件。〟
舞台は関東近郊の地方都市、三ツ鐘。
市の郊外に位置する三ツ鐘署の別名は「三ツ鐘村」。
警察署と幹部官舎、家族官舎が一体化した村社会だ。
表題作「深追い」は、
突然の事故で逝った夫のポケベルにメッセージを送り続ける妻と、
逃走車の深追いで左遷を余儀なくされた元白バイ警官の物語。
「又聞き」は
幼い頃の海難事故で、重い十字架を背負った刑事の物語。
「引き継ぎ」は、
父の代から追い続けた伝説の泥棒を追う、若い刑事の物語。
「訳あり」は、
再就職斡旋に奔走する警務課員に押しつけられた、警察庁キャリアの後始末。
「締め出し」は、
強盗殺人の捜査から締め出された、生活安全課の刑事の物語。
「仕返し」では、
あるホームレスの病死が 官舎内の人間関係に大きく影響する。
「人ごと」は、
交番前に落ちていた園芸洋品店の会員カードをめぐる物語。
〝骨太な人間ドラマと美しい謎が胸を揺さぶる、不朽の警察小説集―〟
背表紙に書かれた惹句が、やけにうなずける1冊である。
うなるような仕掛けと、味わい深いドラマに加え、
警察社会独特の閉塞感が、絶妙のスパイスとして物語を香りづける。
これを読んで警察組織に憧れる人間もいないだろうが、
よくも悪くもその本質を突いているんではないだろうか、と思う。