横山秀夫「深追い (新潮文庫)」

mike-cat2007-11-20



〝横山ミステリーの最高峰!〟
警察小説の旗手による、7編の短編集。
〝ある警察署に勤務する7人の男。
 彼らの人生を変えた7つの事件。〟
舞台は関東近郊の地方都市、三ツ鐘。
市の郊外に位置する三ツ鐘署の別名は「三ツ鐘村」。
警察署と幹部官舎、家族官舎が一体化した村社会だ。


表題作「深追い」は、
突然の事故で逝った夫のポケベルにメッセージを送り続ける妻と、
逃走車の深追いで左遷を余儀なくされた元白バイ警官の物語。
「又聞き」は
幼い頃の海難事故で、重い十字架を背負った刑事の物語。
「引き継ぎ」は、
父の代から追い続けた伝説の泥棒を追う、若い刑事の物語。


「訳あり」は、
再就職斡旋に奔走する警務課員に押しつけられた、警察庁キャリアの後始末。
「締め出し」は、
強盗殺人の捜査から締め出された、生活安全課の刑事の物語。
「仕返し」では、
あるホームレスの病死が 官舎内の人間関係に大きく影響する。
「人ごと」は、
交番前に落ちていた園芸洋品店の会員カードをめぐる物語。


〝骨太な人間ドラマと美しい謎が胸を揺さぶる、不朽の警察小説集―〟
背表紙に書かれた惹句が、やけにうなずける1冊である。
うなるような仕掛けと、味わい深いドラマに加え、
警察社会独特の閉塞感が、絶妙のスパイスとして物語を香りづける。
これを読んで警察組織に憧れる人間もいないだろうが、
よくも悪くもその本質を突いているんではないだろうか、と思う。