樋口有介「不良少女 (創元推理文庫)」

mike-cat2007-11-15



〝万年金欠の柚木が手掛けた事件調査<アルバイト>。
 嫌々、だけど美女がらみで心惑う四つの謎
 +柚木自筆エッセイ初収録!〟
創元推理文庫で再収録中の柚木草平シリーズ、
未収録の短編4編をまとめた、待望の最新刊。
〝柚木草平の〟自筆エッセイに加え、
解説・杉江松恋による、シリーズ美女名鑑もついて、
やたらとコストパフォーマンスがよろしい、ファン必読の1冊。


金欠に苦しむ柚木草平が、嫌々渋々引き受けた4つの事件。
「秋の手紙」は、
恋人吉島冴子の従妹の子、菜穂美に届いた不審な手紙の謎を追う一編。
「薔薇虫」は、
「月刊EYES」の編集者、小高直海の紹介で引き受けた、ペット怪死事件。
表題作「不良少女」では、
街で偶然出会った、金髪少女のトラブルに巻き込まれる。
「スペインの海」では、
馴染みのオカマバーで出会ったエスコート業の女のトラブル処理をめぐる一件。


時には明快な謎解きもないまま、苦い後味を残すような、
柚木の厭世観がそのまんま物語全体にも漂うような短編が目立つ。
柚木草平〝最初の事件〟でもある「夢の終わりとそのつづき (創元推理文庫)」に続き、
いわゆる濡れ場というやつも、描かれていて、やや違和感もある。
特に「不良少女」での、それは、何だか柚木らしくないイメージもあって、
作者にとっての、このシリーズの位置付けが、
当時はやや揺れていたのかな? なんて思ったりもしてしまう。


とはいえ、柚木草平そのものはいつも通りの、だらしない女好き。
シリーズならでは、の醍醐味は存分に味わうことができるのでご安心を。
さらに、前述の杉江松恋による美女名鑑で、
これまでのシリーズを振り返ることができるのもなかなか嬉しい趣向だ。
シリーズの再収録はこれでひとまず終了。
あとは「ミステリーズ!」連載中の、
最新長編「捨て猫という名前の猫」の刊行を待つばかり、となる。