平山夢明「他人事」

mike-cat2007-11-12



〝このミス第一位の著者による最新作〟
独白するユニバーサル横メルカトル」の悪夢が甦る―
〝空想が生んだ惨事が心の空白を埋める。
 無意味で不気味な心の暗渠を覗く14編。
 これを読む者は一切の望みを棄てよ。〟
小説すばる」などの連載をまとめた短編集。


目を覆いたくなるような場面が醸し出す、不思議な美しさや哀しさ…
平山夢明一流の、残虐描写のみがなしえるファンタジーは健在だ。
誰にも真似ができない、まさにワン・アンド・オンリーな世界観。
1編1編読み終えるごとに、悪寒や戦慄を振り払わなければいけないのに、
なぜか次を読まずにはいられない、まさしく怖いもの見たさに満ちている。


印象的なのはやはり表題作「他人事」だろうか。
いかにも平山夢明っぽい、ざらりとしたイヤな感触を味わい、
14編を読み抜く、こころの準備を整えていく感じだろうか。
しかし、なぜそこまでイヤな結末に持ち込むのか、苦笑いも浮かぶ。


「たったひとくちで…」も、いやあな後味がたまらない。
何となくそんなオチかな、とは想像はつくのだが、
見えているはずのオチに持ち込むまでの描写がえげつない。
このオチをここまでイヤな感じに描ききるのは、やはりこの作者しかいない。


「仔猫と天然ガス」は、理不尽さに思わずゾッとする1編。
何もそこまで…、の残虐描写の果てに、迎える結末といったら…
「れざれはおそろしい」も、ネタが見えつつ、
そこに至るまでの経緯に、たまらないほどの悪寒を覚えてしまう。
「クレイジーハニー」は、パロディSFとして、軽く映像化してみたい1編。
とはいえ、放送禁止はまず間違いないだろうが…
自殺の名所での顛末を描いた「人間失格」は、
作者の人の悪さが、極限まで引き出された1編ではなかろうか。
そうか、そうなるのか…、と思わずため息さえ漏れる、イヤな感じである。


まるで痛さが伝わってくるような描写に、ゾクゾクしながら読みふける。
悪趣味を極め、その先を見すえる平山夢明の世界。
「独白する〜」の衝撃度には及ばないが、やはり特別な感触だ。
さすが、とうなるしかない、そんな1冊であった。