シャーリイ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)」

mike-cat2007-10-12



〝皆が死んだこのお城で、あたしたちはとっても幸せ。〟
じわじわと、しかし強烈ににじみ出る悪意―
くじ (異色作家短篇集)」の作者が送る、異色ホラー。
〝すべての善人に読まれるべき、
 本の形をした怪物である。――桜庭一樹
ざらりとした舌触り、そして魅惑的なまでに不快な読後感。
〝“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、
 少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作〟


〝あたし〟の名前は、メアリ・キャサリン・ブラックウッド。
ほかの家族が皆殺しにされたこの屋敷で、
家族の最後の日を再現した本をしたためるジュリアンおじさん、
そして姉のコニーとともに静かに暮らしている。
まことしやかな噂をささやき、〝あたし〟を敵視する村人たち。
悪意に満ちた世界で、支え合う〝あたし〟たちの世界。
だが、突如姿を現した従兄のチャールズが小さな波紋が投げかける。


毒で家族を皆殺しにされた一家。
だが、犯人として疑いがかかったのは、当の娘だった。
事件を揶揄するような歌を歌い、
あからさまな悪意を投げかける村人たち、そして、親切めかした友人…
いかに世界が悪意に満ちているのか、その描写が何とも言えない。
解説で桜庭一樹が?虫酸が走るような不快感?が癖になる、
と書いているが、まさしくそんな感じである。


なかなか序盤は話が見えず、のめり込めないのが残念だが、
ややオチが見えてきた中盤以降は、
その見えている感じすらいい感じで作用する描写がさえる。
そして、最初にも書いた通り、後を引くような、独特の読後感。
不快だけど、何とも言えない妙味があって、これがまたいい。
じっくり味わいつつ読み進めたい、1冊である。



Amazon.co.jpずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)