伯方雪日「誰もわたしを倒せない (創元推理文庫)」

mike-cat2007-09-29



〝頂点を望むなら、
 とっておきの計略<アングル>を用意しろ。
 誰にも見破れない、
 最高の仕掛け<トリック>を。〟
本格ミステリとプロレスが合体!
虚々実々が入り交じるプロレス界を舞台に、
鮮やかでトリッキーな謎解きが光る連作集だ。
〝二人の刑事が遭遇する、
 プロレス業界の不可思議な殺人〟
最強を目指す男たちのドラマが、熱く展開する。


「なにをしてもいい、どんな手を使ってもいい、
 一番強い男になりなさい、そのために、わたしができるのはこれくらい」
そう語って、女は子供を孤児院の前に置き去った―
強烈な場面から始まる物語は、第1話の「覆面」。
まるで梶原一騎「タイガーマスク」を思わせる設定に、
現実の初代タイガーマスク佐山聡や、アントニオ猪木を思わせる登場人物、
そして、ヴァーリ・トゥードの登場で、大きく揺らいだ当世プロレス事情…
さまざまな要素を盛り込みつつも、
鮮やかなツイストで読者をあっと言わせる。


後楽園ホールのごみ捨て場に遺棄された覆面レスラーらしき死体。
その謎を追って、プロレス界に足を踏み入れた、
ベテラン三瓶と、新人城島の二人の刑事が目の当たりにする、
プロレス界の光と闇と裏事情が、やけに面白い作品でもある。


第二話「偽りの最強」では、世界最強の男、ヒクソン・グレーシーをモデルにした人物、
第三話「ロープ」では、プロレス界といえば、の合宿所の鬼寮長、
そして第四話「誰もわたしを倒せない」では、再び世界最強の人物が登場。
それぞれのエピソードを巧妙にリンクさせながら、
胸が熱くなるような「エピローグ」へと持ち込むその手練。
まさしく、プロレス顔負けのトリックスターぶりといってもいい。
プロレス(または総合格闘技)に詳しいヒトはもちろんのこと、
そのテのものにまったく興味がない人でも、このミステリはありのはず。
読み終えて、思わずニヤリとしてしまうこと請け合いだ。


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