柳原慧「コーリング 闇からの声」

mike-cat2007-08-12



〝顔が崩れていく!〟
パーフェクト・プラン (宝島社文庫)」で、
このミス大賞を受賞した柳原慧最新刊。
〝美を追い求めた女の恐ろしい結末
 死者が出た部屋の清掃を行う特殊清掃、その現場で見えたものとは…〟
死体清掃に霊感、美容整形などなど、
キャッチーな話題満載で送るエンタテインメントだ。


死体清掃や、特殊清掃「リフレックス」で働く〝僕〟純也は、
練馬区豊玉のアパートでドロドロの変死体となって発見された、
津島恵美の霊を現場で見つけてしまった。
リフレックス」の社長で、友人の山上零とともに、
恵美の死の謎を探り始めた〝僕〟は、衝撃に事実にぶつかる―


死体清掃にSNS
美容整形、霊感、そしてあの恐怖の病…
面白いものは全部取り入れてしまおう、という貪欲さにあふれる、
そのまんまエンタメ志向120%の作品である。
ちょっとした危ない悪戯も仕掛けてあって、
かなり悪趣味な読者にも、なかなかの満腹感がもたらされる。


ネタのてんこ盛りの一方で、
話の進行自体は安直というか、ご都合主義の感は否めないが、
その分疾走感というか、ストーリーのテンポを重視したともいえそう。
読み始めたら、あれよあれよという間に切り替わる展開で、
退屈してるヒマは、ほとんどといっていいほどない。


冒頭からして強烈な描写である。
風呂場の水槽に、ドロドロに〝溜まった〟腐乱死体。
リアルな描写に、以前に紹介した
アラン・エミンズの「死体まわりのビジネス-実録●犯罪現場清掃会社」を思い出すが、
案の定、巻末の参考文献にしっかりと名前があったりする。
きちんと想像力を働かせて読むと、かなりイヤな思いをするので、
心臓が弱い方は、30%ぐらいの想像力で読むことをお勧めしたい。


霊感がらみのエピソードは、郷田マモラ「きらきらひかる」風。
〝この世に強い思いを残しながら死んだ者は、
 受け止めてくれる者に向かい、その念を投げて来る。〟
凄惨な死を遂げた恵美の思念を受け止めた純也は、
つながっているようで、つながっていないネットの世界の交友関係や、
美を創り出す美容整形の、汚い裏側を右往左往しながら、真相に迫る。
〝華やかに見えて、裏を返せばどろどろの黒い闇が渦を巻いている。
 それがこの世界なのかもしれない。〟
ついにたどり着いた戦慄の結末は、
盛りだくさんの内容に負けないぐらいの激しい中身となっている。


前述の通り、細かいアラを探し出すと、もう物語が立ちゆかなくなるので、
あくまでストーリーはサラサラと追うのがお勧めだ。
その分の刺激は、ほかでいろいろと味わうことができるので、心配はいらない。
このテの話題がお好きな方には、まあハズレのない1冊といえるだろう。


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