ウィリアム・ランデイ「ボストン・シャドウ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 281-2))」

mike-cat2007-07-27



〝驚愕のデビュー作「ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)」で
 全世界を震撼させた著者の最新長編〟
前作は、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞に、
2003年度の「週刊文春ミステリー・ベストテン」3位、
「このミステリーがすごい」7位と、絶賛された傑作。
その著者が満を持して送り出す最新作は、
1960年代、実際にボストンで起こった、
絞殺魔(ストラングラー)事件をモチーフにしたクライム・サスペンス。
〝固い絆で結ばれた三兄弟に迫る 邪悪で残忍な影、影、影!〟


時は1960年代前半、市街地の再開発が進むボストン。
解体工事が進む街を震え上がらせていたのは、
年配の女性を次々と陵辱し、惨殺する「ストラングラー絞殺魔)」。
街の再開発事業に携わる検察官のマイケル・デイリーは、
地方検事の肝いりで新設されたストラングラー特捜班の一員に抜擢される。
そんな折、ギャンブルに溺れる汚職警察官の兄ジョー、
腕のいい空き巣狙いの弟リッキーは、ちょっとしたトラブルに巻き込まれていた。
警官だった父が殉死し、揺れる家族に迫る新たな危機。
ボストンの街は、暗い闇に包まれようとしていた―


例によって例のごとく、細かい内容は全然覚えていないが、
「ボストン、沈黙の街」は、滅法面白い作品だった記憶がある。
その作者がまたもボストンを舞台に、新作を書き上げたとあったら、見逃せない。
というわけで、さっそく手に取ってみると、これがまためちゃくちゃ面白い。
連続猟奇殺人事件にボストンの再開発、そしてギャングたち…
さまざまな要素を複雑に、しかしテンポよく織り交ぜつつ、
個性的な3兄弟の物語を紡ぎ上げていくその巧さには、舌を巻くしかない。


物語の冒頭ではケネディ暗殺の報が、ボストンを駆け抜ける。
その中で描かれる街の雰囲気が、
当時を知らない人間にも生き生きと伝わってくる。
いきなりグッと、物語の世界に引き込まれる瞬間だ。
そして、そのJFK暗殺が、中盤でまたもうまく絡んでくる。
時代設定のうまさを感じさせるのである。


多少ネタバレにはなってしまうが、予想外の展開で進んでいく物語は、
ボストン版ペリイ・メイスン(それも悪徳版)みたいなのも登場するし、
決して単純明快なハッピーエンドに至ることはない。
「この世界でそんなことは許されない」
「ここは世界じゃない。ボストンだ」
その言葉のダークな響きは、そのまま物語の複雑な余韻にもつながる。


もう読み始めたら、止まらない。あっという間の一気読み。
久しぶりに前作も読み返したくなる。
さすが、とうなるしかない快作に、思わず感嘆のため息がもれるのだった。


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