マイクル・コナリー「ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)」「ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)」

mike-cat2007-03-08



ますます盛り上がる、ハリー・ボッシュのシリーズ第4弾。
累計55万部を突破したらしいが、読めば納得というものだ。
いまさらながら読み進めているわけだが、
一気に読める喜びを考えれば、それもなかなか悪くない。
この作品も、もちろん圧倒的な面白さに一気読みとなった。


またもトラブルを巻き起こし、強制休職処分を科されたハリー・ボッシュ
復職のための条件である、精神分析医とのカウンセリングの中で、
ボッシュは長く顧みることのなかった、みずからの重大な使命に気づく。
それはボッシュ自身の人生を大きく左右した33年前の、あの事件だった−


LAを襲った大地震で家が半壊、恋人シルヴィアとの関係も解消され、
仕事にいたってはトラブルが元で休職処分という、散々な顛末で物語の幕は開く。
前作「ブラック・ハート」で因縁のドールメイカー事件を解決したボッシュだが、
そのこころの片隅には、まだ大きな未解決事件が引っかかっていた。
人生を変えた大きな悲劇、養護施設での少年時代、養父母との不快な思い出…
これまでの半生を回想しつつ、その解決に奔走するボッシュ
休職処分解除をめぐってのカウンセリングや、
相も変わらずの上司とのいざこざに悩まされながらも、ボッシュは突き進んでいく。


事件そのものの方向性が十分に見えない前半は、
焦れるような思いも抱きつつ、ボッシュの苦境を見守るしかないのだが、
後半に入って事態が動き出すと、あとはジェットコースターのような急展開。
おお、そういう持っていき方もあるのか、と驚かされ続けながら、読み進める。
事件の裏に隠されていた、哀しき秘密にも打ちのめされながら、
あとは複雑な余韻の残るラストへ一気に突っ走っていくのだ。


〝最後のコヨーテ〟になぞらえた、ボッシュの生き様もさることながら、
ボッシュの原点に迫っていく、探求の旅も魅力は十分、
今回のヒロインでもあるジャスミンや、よき理解者となるイノーホス医師、
そしてかつての仇敵アーヴィン・アーヴィング警視正補とのからみも抜群に面白い。
さすが人気シリーズ、と感心するしかない、ノリにノってる4作目といっていいだろう。


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