G・M・フォード「毒魔 (新潮文庫)」

mike-cat2007-03-07



〝白昼の劇物散布―― 即死者116名。
 意外すぎる黒幕の最後の狙いとは?〟
憤怒 (新潮文庫)」「黒い河 (新潮文庫)」「白骨 (新潮文庫)」に続くシリーズ第4弾。
ニューヨーク・タイムズの元辣腕記者、フランク・コーソが今回挑むのは、
シアトルのバスターミナルで起こった、死者100人を越えるテロ事件。
全身刺青美女の元恋人、メグももちろん登場し、事件解決に活躍する。


シアトル中心部のバスターミナルで、人々が血を撒き散らして急死した。
米政府はテロと断定し、アラブ系を中心に、犯人の洗い出しに取り掛かる。
運悪く(よく?)、またも現場に出くわしたコーソは、さっそく捜査に乗り出す。
一方、その日写真展を開いていたメグは、テロ騒動で展覧会は台無し、
ショックのまま帰途につくと、あの因縁の男の姿を目にすることになる−


このシリーズのウリでもあるスピード感は相変わらずだ。
バスターミナルの惨劇から、コーソ&メグが一気に騒動に巻き込まれ、
全米を揺るがす大事件の渦の中で、シアトル市警やFBI、メディアも大暴走、
謎めいた犯人たちの本当の目的が見えてくるとき、ドラマは最高潮を迎える。


テロが題材といっても、「アラブ人=悪」的な「テロとの戦い」とは一線を画する。
アメリカでの出版は2004年。
9・11以後、愛国法制定などで右傾化していた、
(だいぶブッシュ批判も強まってはいたと思うが…)かの国で書かれたにしては、
かなり明快に、「世界に厄災を振りまいたアメリカ」的な視点も加えている。
テロリスト擁護とはいわないが、じゃあなぜテロの標的になるのか、
という部分にフォーカスを当て、単純明快な勧善懲悪とは違う味わいを醸し出す。


正直、フランク・コーソの活躍の印象は、今回はやや薄め。
フランク・コーソが主人公である必然性を突き詰めていくと、ちょっと薄弱にも感じる。
もちろん、コーソ&メグのコンビならではの魅力もあるから、
一概にはいえないが、ノンシリーズで制約なく書いても面白かったのではないか、とも思う。
出来そのものは、シリーズを通じて標準レベルにとどまるが、
これまで3作を面白く読めたファンなら、読み続ける価値は十分だと思う。


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毒魔
毒魔
posted with 簡単リンクくん at 2007. 3. 5
G.M.フォード〔著〕 / 三川 基好訳
新潮社 (2007.3)
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