マイクル・コナリー「ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)」

mike-cat2007-02-21



「ナイトホークス」に続くハリー・ボッシュのシリーズ第2作。
ハリウッド署殺人課の一匹狼が今回挑むのは、同僚の謎の死。
LAから南下し、メキシコはメヒカリへ。
捜査が進むにつれ、ボッシュの周辺にも危険が…


ハリウッド署管内で、麻薬課刑事の死体が発見された。
モーテルの一室でショットガンで頭を撃ち抜かれたカル・ムーアは、
つい先日、ハリー・ボッシュ接触したばかりだった。
書き置きには〝おれは自分がなにものかわかった〟
自殺か、それとも…
強盗殺人課、そして内務調査課の不審な動き、そしてボッシュの周囲に迫る危険。
捜査の手はLAからメキシコへ。
「ブラック・アイス」とはいったい−


ハードボイルドなタッチと、サスペンスフルな展開。
「ナイトホークス」から引き継がれた、シリーズの味わいはそのままに、
ボッシュの生い立ちをからめた、多層的なドラマの盛り上がりが楽しい。
自らのルーツにこだわる同僚の捜査が、ボッシュの生い立ちに重ね合わせられる。
ルネサンス期の作家と同じ名前の、ヒエロニムス・ボッシュにまつわるエピソードも、
前作以上に掘り下げられ、ボッシュの抱える葛藤や孤独がじりじりと伝わってくる。
ヘルマン・ヘッセの「荒野の狼」、そしてレイ・チャンドラーの「長いお別れ」、
数々の作品からの引用もまた、強烈なスパイスとして物語を彩る。


一方で、暗闇迫るLAと対照的なメキシコの光景も印象的だ。
メキシコ国境の街や、メヒカリでの乾いた描写もリアルに迫ってくる。
埃っぽい空気の中に放り出されたような、そんな感覚を味わいつつ、
ボッシュの身に迫る危険がひたひたと感じられるのも、また一興だ。


そして、暗中模索を続けたボッシュが、ついにたどり着く〝秘密〟。
その瞬間、すべてのパズルの鍵がカチリとはまるような爽快感は、
孤独な戦いを続けるボッシュにまとわりつく、重い空気と対称的な色合いを見せる。
だからこそ、独特の余韻が、頭について離れなくなるのだ。


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