有川浩「図書館危機」

mike-cat2007-02-12



〝図書館は誰がために――〟
メディア良化法の検閲と戦う、
図書隊の活躍を描く「図書館戦争」シリーズ最新刊!!
〝終始喧嘩腰でシリーズ第3弾、またまた推参!〟


〝王子様、ついに発覚! 山猿ヒロイン大混乱!
 玄田のもとには揉め事相談、出るか伝家の宝刀・反則殺法!
 ――そしてそして、山猿ヒロイン故郷へ帰る!?
 そこで郁を待ち受けていたものは!?〟
以上、あらすじということで、盛りだくさんの内容で迫る。
あとがきによれば、この図書館シリーズはあと1作、
4部作の第3章にあたるということで、起承転結の〝転〟っぽい部分も多い。


検閲をめぐる図書館と良化委員会の抗争は悪化の一途をたどる一方で、
今後を占う大きな転機ともなる事件が次々と勃発。
また、〝山猿ヒロイン〟の郁と、実は王子様だった堂上だけでなく、
図書特殊部隊隊長の玄田と「週刊新世相」の記者・折口、
郁の同期でライバル、手塚と、郁と同室の「情報屋」柴崎の関係は、
強烈にこっ恥ずかしく、グッとロマンティックに、ノリノリ少女漫画ふうに進展していく。
ボルテージは上がりっぱなしで、飽きさせるヒマなんて一切ない。
〝相手の言動一つ一つで舞い上がったり不安になったりしっかり翻弄〟される、
〝乙女ゴコロの心意気〟を、極上のベタ甘に味わうことができる。


もちろん、そんな圧倒的な乙女エンジン全開の中にも、
印象深いエピソードが数々散りばめられていて、
先が知りたいのに、じっくり味わいたい、という矛盾にも苦しむ。
(無論、そういうじれったさも楽しいんだが…)
カミツレ、つまりカモミール花言葉に隠された、強い決意の物語、
そして、「ねじれたコトバ」での言葉狩りに関する問題提起…


近年メディアを中心に「〜屋」という表現が差別的とする、妙な風潮が広がっているが、
作品の中では「床屋のどこがいけない!」という、ごく真っ当な主張が登場する。
何もいけなくない。はずなのだ。
もし、それが差別と思うなら、差別と思う側にこそ、間違った差別的な意識がある。
もちろん、あえて差別的に使う連中もいるのだろうが、それこそ黙殺すべきだろう。
もし、そうした呼称が差別的になるのなら、もっと問題は根本の部分にある。
〝危ない〟言葉というだけで思考停止に陥り、右から左へ忌避することこそ、
差別的思想をもたらそうとする連中の、思うがままの行動であることを忘れてはならない。
そんなことを、あらためて強く思い知らされる、強いメッセージが伝わってくる。


つくづく、このシリーズがあと1作で終わってしまうのは残念だが、
一方でその、潔さというか、心意気というか、粋な決意を感じたりする。
こころして読むぞ、味わうぞ、シリーズ完結編! ということで、
読む側の決意もまた新たにしてみるのだった。


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図書館危機
図書館危機
posted with 簡単リンクくん at 2007. 2.11
有川 浩著 / 徒花 スクモイラスト
メディアワークス (2007.3)
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