マイクル・コナリー「ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)」「ナイトホークス〈下〉 (扶桑社ミステリー)」

mike-cat2007-02-11



チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)」で、マイクル・コナリーの魅力に、
(大変)遅ればせながら、目覚めてしまった。
というわけで、
数々の傑作を生み、警察小説最高のシリーズとも称される、
ハリウッド署殺人課刑事(その後、私立探偵)、
ハリー・ボッシュの、輝くべきシリーズ第1作に挑戦だ。


ハリー・ボッシュは内務監査課の奸計にはまり、市警本部からハリウッド署に左遷された。
パイプの中で発見された、ヴェトナム時代の戦友の死体の捜査を担当することになったボッシュ
ヴェトコンと死闘を繰り広げた、かつての悪夢の記憶が甦る。
驚くべき事実が浮上する中、FBIボッシュに干渉する。
おまけに内務監査課まで再び登場し、孤独なボッシュの戦いはますます熾烈を極める−


コナリー作品に特徴的な、グッとのめり込む導入、
ハードボイルドが貫かれたスタイル、そして、思わず唸るツイストに至るまで、
これが長編第1作とは思えないほどの完成度で迫ってくる作品だ。
人気シリーズとなった最大の魅力でもある、
ハリー・ボッシュのキャラクターも、いきなりグイグイと読む者のこころを惹きつける。
〝几帳面でトラディショナルで、迷信ぶかい刑事〟
〝一匹狼、喧嘩屋、殺し屋。かかってこい、小僧、どんなことでもやってみろ。〟
周囲との軋轢も気にせず、信じた道を突き進む。
それでいて、どこか内省的で、繊細な一面を見せる、という絶妙のバランスだ。


生き生きと描かれるLAのダークサイド、
そして魔窟を思わせる警察内、そしてFBIとの駆け引き。
サイドストーリーも贅沢に織り込まれ、物語は多層に描かれていく。
謎解きのメインテーマともなる、原題の〝The Black Echo(黒いこだま)〟も印象深い。
ヴェトナム戦争で米兵を脅え上がらせた、ヴェトコンのゲリラ戦術〝地下トンネル〟。
青空から暗闇へと転じる、死の象徴でもある。
そんな闇に身を投じたものたちの、哀しいその後。
ボッシュを苦しめる、悪夢の記憶と相まって、深い味わいのドラマを紡ぎ出す。


エドワード・ホッパーによる「夜ふかしをする人たち(ナイトホークス)」を使った、
ラストの余韻も絶妙で、読み終えた瞬間、思わずため息が漏れてしまうほど。
今後のシリーズ作品が読みたくて、身が捩れるような感覚を覚えてしまう。
いままで読んでいなかったのは不覚のひとことだが、
気づかなかった宝の山にめぐり逢えた喜びは、その恥ずかしさを遙かに凌駕する。
さて、次は何を読むか。
刊行順でもいいし、評判のいい作品を先に読んでもいい。
ああ、楽しみで仕方ない。


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ナイトホークス 上
マイクル・コナリー著 / 古沢 嘉通訳
扶桑社 (1992.10)
通常2-3日以内に発送します。
ナイトホークス 下
マイクル・コナリー著 / 古沢 嘉通訳
扶桑社 (1992.10)
通常2-3日以内に発送します。