戸梶圭太「ドクター・ハンナ―死と踊る美人女医 (徳間文庫)」

mike-cat2007-01-29



〝切り裂き美人女医、悪魔の囁き!〟
いかにもトカジだなぁ、という下世話なオビ。
〝長編官能サスペンス〟らしい。
そんなこと書かれたら、買いにくいんですが…
そう思いつつ、手に取ってみた1冊だ。


南青山小森病院の外科医・石月畔奈。
美貌の彼女が繰り出すメスは、鮮やかにして、どこか嗜虐的。
もちろん、それは病院のベッドだけでなく、夜のベットでも…
そんな畔奈の前に立ちはだかるのは、宿敵の内科医・藤井。
手段を選ばない藤井一族の魔の手が、畔奈に迫る−


物語の骨格は、外科医と内科医の反目だ。
外科医は〝必要もないのに患者の体を切ろうとする悪魔ども〟であり、
内科医は、製薬会社と結託し〝患者に大量の、しかも必要もない薬をぶち込み、長患いさせる〟
女王様系の美人外科医・畔奈と、オタク系の不遜な内科医・藤井の間で、
徹底的にカリカチュアライズされたこの対立の構図が、モラル無視で暴走する。


もちろん、トカジ作品だから、脇役もバカばかりだ。
バカ探偵にバカ外科医、バカ内科医にバカ院長が総登場。
ただでさえもつれた状況を、信じられない行動でさらに悪化させていく。
悪趣味全開の大騒動がエスカレートの末、必然的に破綻するのもトカジ流。
まあ、いい意味でも悪い意味でも、いつものトカジ作品である。


ただ、オビにまで〝官能〟とある割に、官能の色はそう濃くない。
別にポルノが読みたいわけでもないから、ブツクサ言うのも何だが、
やはりひとつのテーマでもある以上、もう少し力を入れた描写があっても、とは思った。
これで物足りないのか? と言われてしまうとやや苦しいが、
バイオレンスに偏った性描写に、やはりどこか中途半端な印象が否めない。


とはいえ、読んでいる間は退屈することのない、圧倒的なパワーは健在。
ちょっと疲れた時、出張の移動のヒマな時間など、何の気なしに読むには最高だ。
たてつづけには読む気にならないが、たまに読むとやっぱり楽しい。
戸梶圭太って、そんな作家だよな、と勝手に感心してみたのだった。


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ドクター・ハンナ
戸梶 圭太著
徳間書店 (2007.1)
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