佐々木譲「警察庁から来た男」

mike-cat2006-12-23



〝キャリアのプライドか、ノンキャリの意地か〟
北海道警察警察庁から監査が入った。
 やってきたのはキャリアの監察官。〟
〝このミス〟国内編2位「制服捜査」の佐々木譲最新作。
「制服捜査」と緩やかに連なる「うたう警官」の続編となる。
「うたう警官」でも登場した佐伯、津久井らの面々が、
今回も立ち向かうのは、やはり北海道警の暗い闇だ。



北海道警に異例の特別監査が入った。
やってきたのは警察庁キャリアの藤川警視正
不可思議なタイ人拉致事件、そして、ススキノで起こった会社員転落事件。
北海道警には何かがある。
その疑惑を追及するため、藤川が選んだパートナーは、
北海道警を揺るがした裏金問題で〝うたった〟警官、津久井だった。
女性警察官殺人事件で、津久井の疑惑を晴らした、
大通署の刑事、佐伯とともに、北海道警の見えない闇に挑む−


端的に言うと、オビはかなり偽りあり、だ。
「キャリア対ノンキャリ」の構図は確かに存在はするが、メインテーマではない。
横山秀夫の描くような、警察内部のどろどろの駆け引きともだいぶ違う。
警察の内部汚染はテーマだが、展開はむしろ純粋な刑事物的といっていい。
「腐った匂いがするのはたしかだ。ただ、何が腐っているのかがわからん」
正体の見えない、しかし確かに存在する汚職
数々の疑惑のかすかな符合。だが、なかなかつながらない。
藤川を中心とした、監察サイドの焦燥は終盤までじりじりと続く。


なかなか見えてこないじれったさは、読む側も同じ。
その濃厚さが、この小説の最大の魅力でもある。
終盤のあっけないまでの急展開は、評価の分かれるところかもしれない。
だが、読ませる1冊であることは間違いない。
「制服捜査」のペーソスなんかを期待すると、
意外なまでのストレートさにちょっと違和感を感じるかもしれないが、
ことわかりやすさや読みやすさ、手軽さという面ではお勧めの作品だ。


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警察庁から来た男
佐々木 譲〔著〕
角川春樹事務所 (2006.12)
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