スティーヴン・キング「ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)」

mike-cat2006-12-13



〝旅が始まる。
 キングの圧倒的ライフワーク、ついに刊行開始!〟
これほど、〝ついに〟という言葉がふさわしい本もない。
30年にも及ぶ歳月をかけ、ついに完結なったキング入魂の1作。
旧版の何巻目だったかのオビに、
「私が生きている間に完結できるだろうか?」と、
えらく無責任なことまで書いてあったことが思い出される。
〝キング自身による大幅加筆、新訳、原書カラー口絵全収録〟
12月末の最終巻刊行を前に、ついに読む始めることを決意する。


池央耿訳による角川書店版「ガンスリンガー―暗黒の塔〈1〉 (角川文庫)」が1998年。
たしか判型を変えつつ4巻ぐらいまで出してほったらかし、だったと思う。
まあ、もちろん本国での刊行ペースや、キングの交通事故などもあったし、
すべて角川が悪いわけではないが、
8年前にこの本を手にした読者の苦しみといったら、想像以上のものだろう。
たぶん、身悶えして「何とかならないの?」なんて、嘆いていたんじゃなかろうか。


前書きにもあるのだが、事故で九死に一生を得たキングのもとに、
癌で余命わずかな老婆や死刑囚から、
「話の結末を教えてほしい」と懇願する手紙が届いたという。
キングにとっての「指輪物語」は、「ザ・スタンド」「IT」などなど、
これまでキングが打ち立てた、数々の金字塔をすべて収斂していくという。
アトランティスのこころ」や、リチャード・バックマン名義の「レギュレイターズ」、
またいくつかの短編などに登場した<カ>であったり、謎の連中であったり、
そんなキング作品の謎に満ちた数々の断片が、
この作品でぴったりとかみ合わされる(はず)なのだ。


キング自身によって語られる、<19>という謎の数字、
どうも運命、みたいなものを意味するらしい<カ>、
そして、宇宙全体の創造にもかかわる<暗黒の塔>など数々の秘密…
そんな壮大な物語のプロローグとなるのが、この作品だという。


舞台は核戦争後の未来、そして開拓史時代の西部を思わせる砂漠と荒野。
主人公は黒衣の男を追い求める、最後のガンスリンガー、ローランド。
安酒場の女、アリスや、現代(らしい)からやってきた少年ジェイクとの出逢い、
そして、ローランドの修業時代の回想や、黒衣の男による壮大な告白…
変転する世界の断片を垣間見るような、まとまりのない連作集の体裁だ。


〝かくて、いつ終わるとも知れぬ探索の旅が始まった。〟
その言葉通り、まさにプロローグというか、それ以前の〝0巻〟のような感覚だ。
謎まみれの世界観も、その世界に横たわる数々の言葉や現象も、
ほとんど説明されないまま展開していく物語は、正直とっつきにくい。
つくづく、旧版読者が途方に暮れたであろうことは、想像に難くない。
訳者の風間賢二によれば、ようやくエンジンがかかって、
グッと盛り上がりを見せるのは、どうも3巻あたりまでかかるらしいとのこと。
まずは、気長に読み進めるしかないのだろう。


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ダーク・タワー 1
スティーヴン・キング〔著〕 / 風間 賢二訳
新潮社 (2005.12)
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