樋口有介「初恋よ、さよならのキスをしよう (創元推理文庫)」

mike-cat2006-10-17



彼女はたぶん魔法を使う (創元推理文庫)」に続く、
〝38歳〟の青春私立探偵・柚木草平シリーズ第2弾。
〝再会した初恋の女性が殺害された。
 事件と過去の思い出が柚木草平を深く悩ませる〟


相も変わらず、出会う女性出会う女性にふらふらする柚木草平は、
20年ぶりに再会したばかりの憧れの人が被害者となった殺人事件に立ち向かう。
初恋の君の姪に惹かれつつ、事件解決に頭を悩ます柚木だが…


今回のテーマは、青春の甘酸っぱさ、そしてほろ苦さ、といったところか。
いまもほのかな想いを残す初恋の人の事件をめぐり、
高校時代は、遠巻きに眺めるばかりだった同級生グループを訪ね歩く。
「あのころはみんな、自分がどんな人間にもなれると信じていた」
そんな青臭さも含めた、登場人物たちの回想は、恥ずかしくも切ない。


高校時代には見えなかった、それぞれの本当の姿を知るとき、
青春の偶像は破壊され、年月という現実が重くのしかかってくる。
それは、38歳にもなって、小学生の娘に対し、
女の人を追いかけ回すのは「宿命があって…」なんて言い訳している、
ダメダメなオトコであっても、変わりはないのである。


相も変わらずムシのいいオトコのファンタジーではあるけど、
それでも、柚木草平に自分を投影したくなってしまうのが、情けないところだ。
シリーズ第3作も、間違いなく読んでしまうだろうな、と思いつつ、本を閉じたのだった。


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初恋よ、さよならのキスをしよう
樋口 有介著
東京創元社 (2006.9)
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