梅田・OS名画座で「サンキュー・スモーキング」

mike-cat2006-10-18



クリストファー・バックリー原作の「ニコチン・ウォーズ (創元推理文庫)」を映画化!
舌先三寸で情報を操作する、タバコ業界のロビイストを描いたコメディだ。
ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマンの息子、
ジェイソン・ライトマンが脚色も兼ねて、初のメガホンを握る注目作。
全米では小規模公開ながら、大ヒットになったというが、
なるほど、シニカルで辛辣な笑いに満ちた傑作に仕上がっている。


主演のニック・ネイラーに「ブラック・ダリア」「ザ・コア」のアーロン・エッカート
反タバコ運動を仕掛ける上院議員に「カラー・オブ・ハート」のウィリアム・H・メイシー、
俺たちニュースキャスター」(日本未公開)のデヴィッド・コークナー、
ワールド・トレード・センター」のマリア・ベロ
ほかにもロバート・デュバル、ケイト・ホームズ(ケイティー・ホームズ)、
サム・エリオットロブ・ロウ(!)などなど、なかなかくせ者揃いの布陣が並ぶ。


ニック・ネイラー=エッカートはタバコ業界のやり手スポークスマン。
抜群のディベート技術と減らず口、そしてスピニング(情報操作)で、
タバコ業界への批判をうまくそらし続けるのが、その主たる仕事だ。
自称「1日に1200人を殺す業界の顔」にして、「ニコチンのカーネル・サンダース」。
しかし、反タバコの急先鋒、フィニスター上院議員が、
タバコのパッケージにドクロマークをつける法案を提出するなど、事態は悪化。
タバコ業界の利益を守るため、テレビ出演に交渉に、ニックは奔走する−


タバコを扱った映画ということで、パッと見はかなり政治的な映画にも映る。
だが、タバコに対するスタンスは、
〝選択の自由〟という本当のテーマを語る上でのモチーフに過ぎない。
そして、笑いの要素として、
ニックの減らず口と、こうした特殊な業界を取り巻く滑稽なシチュエーションが登場する。
チェダーチーズの産地ヴァーモント州選出の上院議員フィニスターに、
「死因1位のコレステロールが豊富なチーズにも、ドクロをつけるべき」と主張するなど、
その巧みすぎる論点のすり替えには、思わず笑ってしまうしかない。


ロブ・ロウ演じるハリウッドのエージェント(日本かぶれ)や、
ナニを考えているのか、いまいちわからない新聞記者ケイト・ホームズ、
スパイダーマン」でもお馴染みのJ・K・シモンズ演じるニックの上司などなど、
ヘンな人たちも盛りだくさん。
同じく世間の嫌われ者でもある、死の商人(Merchant Of Death) 、
アルコール業界や銃器製造業界のスポークスマンが、
毎週末に飲み会を兼ねて開く、MOD特捜隊のミーティングも何ともおかしい。
議論が白熱するにつけ、いつの間にか1日に何人殺しているのか、を競っていたりして、
とても公の場では口にできないような、とんでも発言がポンポンと飛び出してくるのだ。


息子のジョーイをからめた本筋のストーリーも、やや出来過ぎの感はあるが、
なかなかうまくまとめているので、映画としてのカタルシスも十分。
ここ最近のコメディでは屈指の、楽しく笑わせ、満足させてくれる作品だ。