大崎梢「晩夏に捧ぐ (ミステリ・フロンティア)」

mike-cat2006-10-06



元書店員が描く本格書店ミステリ第2弾!
前作「配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)」で数々の難事件を解決した、
あの書店探偵が帰ってきた。しかも、出張編!
今回の謎は〝地方の老舗書店に幽霊騒動?!〟ときた。


駅ビル六階の書店「成風堂」に務める杏子と多絵は、
「本屋の謎は本屋が解かなきゃ」がモットーの〝書店探偵〟。
2人のもとに飛び込んできたのは、かつて成風堂に務めていた美保からの依頼。
それは何と、故郷の老舗書店「まるう堂」に出現した幽霊の謎を解くというものだった。
27年前の殺人事件の影もちらつく中、本屋探偵の推理がさえ渡る。


いまの書店事情などをうまく取り込み、本好き、本屋好きを引き込む設定は、前作に同じ。
今回は、出張編ということで、地方の書店事情を中心に、エピソードが展開する。
小さな書店が苦しむ中、老舗の看板を守って奮闘したり、
レンタル店併設店舗でありながら、独自の色合いを出そうとする書店主たちの姿が興味深い。


そこに貫かれているのは、本を愛し、書店を愛する人たちの思い入れだ。
〝飾り物ではない生きている本がひしめくフロアで、
 手から手へ、思いから思いへ、たくさんの創造物を繋げていく仕事〟
棚作りやPOPに限らない日々の仕事を通じ、出版文化に携わる人間の矜持が伝わってくる。
また、主人公たちのエピソードも随所に紹介され、シリーズへの愛着も深まってくる。
〝名探偵〟の多絵が、「成風堂」で仕事をするようになったきっかけもなかなかに味わい深い。


ただ、全体的な仕上がりを考えると、前作にはやや及ばない印象もある。
面白いのは面白いのだが、短編をややたっぷりめに描いた感じが否めない。
前作のような、短編の方が、小説としては切れがいいような気もするのも、確かなのだ。
幸い、著者は短編集として3作目を鋭意執筆中とか。
ターミナルの書店で再び繰り広げられる、日常ミステリに、期待したいところだ。


Amazon.co.jp晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編>


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晩夏に捧ぐ
晩夏に捧ぐ
posted with 簡単リンクくん at 2006.10. 3
大崎 梢著
東京創元社 (2006.9)
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