三浦しをん「三四郎はそれから門を出た」

mike-cat2006-09-24



遅ればせながら、祝! 直木賞受賞ということで。
〝それでも本から離れられない
 人気作家にして筋金入りの活字中毒者、三浦しをんの秘密の日常。〟
朝日新聞での表題連載「三四郎はそれから門を出た」を中心に、
紀伊国屋書店ウェブマガジン「i feel」や「anan」などでの、
書評や読書コラム、その他もろもろなどをまとめたエッセイ集。


しをんのしおり (新潮文庫)」や「桃色トワイライト」などでの、
いつもの妄想まみれエッセイと比べると、いくらかおとなしめの感はあるが、
お馴染みの〝火宅〟の想像図もついた、お得な一冊だ。
〝一日に一回は本屋に行かないと落ち着かない。
 大雨が降ろうが極寒の日だろうが、
 待ちわびた散歩にようやく連れ出してもらえた犬のように、
 私は決められた道順をたどって近所の本屋に行き、注意深く棚を巡回する〟
そして、一日のうちにすることといったら、
「起きる。なにか読む。食べる。なにか読む。食べる。仕事をしてみる。
 食べる。なにか読む。食べる。なにか読む。寝る」という著者の、
本(もしくは活字)に対する強迫観念的な愛情と、
それにまつわる何ともいえない日常が、赤裸々(?)に記される。


村上春樹の「海辺のカフカ」に始まり、森絵都の名作「永遠の出口 (集英社文庫(日本))」、
哀川翔の名著(!)の数々に、山田風太郎ナサニエル・ホーソーン
紹介される本は、まさにバラエティに富んでいて、書名を眺めるだけでも楽しい。


そして、本にまつわる〝こだわり〟も、何とも強烈だ。
電車の車内で隣の人が読んでいる本が気になってしょうがないエピソードや、
膨大な蔵書の始末に困り果てる様子、人の家の本棚に対する絶大な興味など、
本読みなら、気持ちが多少なりともわかってしまう問題行動にも笑いが止まらない。


第5章の「本を読むだけが人生じゃない」では、
異性の裸に目もくれず、温泉露天風呂の泉質分析に夢中になる人々に驚いたり、
「使い込んだ羽毛布団」を手にした男女の姿に、あらぬ妄想を抱いてみたり、
三浦しをんの爆裂妄想もちょいちょいと登場し、これまた楽しく、一気に読んでしまった。


買ってからしばらくは積んでおいたのだが、もっと早く読めばよかった!とやや後悔。
ブックレビューとしてだけでなく、読書コラムとしても楽しめる1冊だった。
読めば、読書について、また違った角度から考えてみたくなること、請け合いだろう。


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三四郎はそれから門を出た
三浦 しをん著
ポプラ社 (2006.7)
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