敷島シネポップで「もしも昨日が選べたら」

mike-cat2006-09-23



待望のアダム・サンドラー最新作!
原題は〝CLICK〟
家電どころか、人生まで〝操作〟できる万能リモコンと、
それを手に入れた男の人生を描いたSFファンタジー系のコメディ。
監督は「ウェディング・シンガー」「ウォーターボーイ」のフランク・コラチ
脚本は「ブルース・オールマイティ」(主演:ジム・キャリー)の、
ティーヴ・コーレンとマーク・オキーフという、期待のコラボレーション。
共演には「アンダーワールド」「セレンディピティ」のケイト・ベッキンセイル
そして「ディア・ハンター」「デッドゾーン」のクリストファー・ウォーケンに、
デヴィッド・〝ナイトライダー〟・ハッセルホフという、豪華(!)布陣だ。


アダム・サンドラーというと、毎度毎度書いていることだが、
これほど面白いコメディアンはいない、というくらいハズレのない俳優なのに、
日本ではどうしても評価が高まる様子が一向に見られなかった。
前作の「ロンゲスト・ヤード」だって、大阪では天六のユウラク座公開。
東京でいうと、銀座シネパトスのクラスに当たるのだが、
ロードショー館としてはもっとも規模も小さいレベルでの公開ということになる。
それも、アメリカでの公開から大きく遅れ、あちらではDVD発売の頃合いだ。


出演作も、前述の「ウェディング・シンガー」や「ウォーターボーイ」だけでなく、
「N.Y.式ハッピー・セラピー」「パンチドランク・ラブ」「ビッグ・ダディ」と、傑作揃い。
ベン・スティラーほどバカ過ぎないし(あれはあれで大好きだが…)、
ジム・キャリーほどクド過ぎない(それもそれでかなり好きだが…)。
強いていえば、いかにもなアメリカン・コメディだが、その質は保証付きなのに…


と愚痴ばかり並べてしまったが、今回はまずまずの劇場での公開だし、
ブレイクの兆しと勝手に決めつけ、期待をかけることにしたい。
なぜなら、この作品も(もちろん、相当にベタではあるが…)、
過去の傑作にも負けない出来の、楽しめるコメディに仕上がっているからなのだ。
人生を思い通りにできるリモコン、という設定を生かした、
ギャグやドラマもふんだんに盛り込まれ、毒のある笑いとグッとくる泣きも上々。
サンドラー映画を食わず嫌いの人にもぜひお勧めしたい1本だ。


主人公は、美人で聡明な妻、ドナ=ベッキンセイルに2人の子供に恵まれながら、
いつも仕事に追われ、不満を抱えている建築士のマイケル・ニューマン=サンドラー。
短気でいつもフラストレーションを抱えているマイケルにとって、
あふれ返る家電のリモコンも、数多きの悩みのひとつだった。
ある日、癇癪を起こし、すべての家電を操作できる万能リモコンを買い求め、
深夜のショッピングモールに出向いたマイケルは、店の片隅で不思議なリモコンを手に入れる。
それは、家電を操作するだけでなく、
周囲の音を消したり、出来事を早送りできる、人生を操作できるリモコンだった−。


このリモコンがなかなかに楽しいのだ。
ボリューム調整や制止、早送り、スキップだけでなく、
過去の出来事を、DVDと同じ〝解説付き再生〟で見ることができる。
都合の悪い出来事のスキップや楽しかった思い出の再体験や、
約束を忘れたときのチェックなどにも使える、という優れものだ。
ブルース・オールマイティ」と同じく、もしもこんなリモコンがあったら…、と
誰もが想像せずにはいられない、便利なリモコンなのだ。


だが、「ドラえもん」の道具と同じく、ファンタジーの便利な道具には罠がある。
このリモコン、過去の再生はできても、何と巻き戻しはできないのだ。
つまり、出来事を飛ばしてしまったら、もうそこまで。
短気に生き急ぐマイケルがたどる運命は…、と書くまでもなく、展開は見えてくる。
となると、当然オチも見えてくるのだが、まあそれはいわずもがな。
しかし、そんな〝見えている〟ストーリーにも関わらず、
お約束だけではないギャグに大笑いし、
そうなるとわかっていながら思わずほろりとなるようなドラマに涙が止まらない。
まさにアダム・サンドラーの本領発揮、といった映画なのだ。


共演陣ももちろん、たまらなくいい。
クリストファー・ウォーケン「タイムトラベラー/きのうからきた旅人」でもお馴染みの、
マッド・サイエンティストぶりで、不気味な笑いを提供してくれるし、
ケイト・ベッキンセイルのチャーミングさといったら、それだけでメシが食えるレベル。
というか、ケイト・ベッキンセイルが奥さん、という時点で、
人生不満なんかないはずだろう、と、映画の前提そのものをひっくり返したくなるほどだ。
そして、デヴィッド・ハッセルホフ!!
アメリカでは、出てきただけで大爆笑が起こっていること間違いなしだろうな、
(たぶん、にしきのあきらと同じ文脈?)というアホっぷりで、これまた笑わせてくれる。


満足に満ちた107分は、あっという間に過ぎていく。
ことし下半期に入ってからは、初めての文句なしの傑作(あくまで個人的趣味だが…)。
DVD出たら、たぶん買ってしまうんだろうな、と思いつつ劇場を後にしたのだった。