有川浩「図書館内乱」

mike-cat2006-09-16



あの「図書館戦争」が待望のシリーズ化! である。
〝図書館の明日はどっちだ!?
 やきもき度絶好調のシリーズ第二弾、ここに推参!〟
図書館戦争「恋愛編」もしくは「キャラクター編」といった趣の一冊。
あの前作の衝撃、というかパンチ力には及ばないが、
小説内で登場する架空の小説「レインツリーの国」を、
著者が実際に書いてしまう仕掛けなど、遊びごころも満載。
ファンならずとも、読まずにいられない魅力に満ちている。


舞台は前作と同じく、
超法規的検閲で、表現の自由、そして本を〝狩る〟「メディア良化法」が施行された世界。
「図書館の自由」を守るべく、設立された図書特殊部隊の新人隊員、
笠原郁を主役とした「月9連ドラ風 行政戦隊図書レンジャー」である。
で、「メディア良化委員会」の横暴と死闘を繰り広げた前作から一転、
今回は図書館での検閲や表現の自由をめぐる葛藤、つまり「内乱」が描かれる。
図書館内でパワーゲームに講じる「行政派」「原則派」に加え、
宿敵「メディア良化委員会」以外にも新たな「敵」も登場し、今後への盛り上がりも必至だ。


とはいえ、前述の通り、ストーリーの基本は「恋愛編」&「キャラクター編」。
まさしくフルーティーな甘酸っぱさに満ちたドラマが、思い切り展開される。
「両親攪乱作戦」では、
〝熱血山猿ヒロイン〟郁が、親バレ阻止(風俗みたいだが…)のドタバタを演じ、
「恋の障害」では、
〝笑う正論〟小牧幹久隊員と、近所の〝女の子〟との甘い恋のメロディが奏でられ、
「美女の微笑み」では、
郁と同室の〝美女情報屋〟柴崎麻子をめぐる〝恋〟の顛末が描かれ、
「兄と弟」では、
郁と同期の〝できるエリート〟手塚光の、隠された秘密が明らかになる。
そして、最終章「図書館の明日はどっちだ」では、
新たな敵の登場が図書館の未来に暗い影を落とし、壮大な戦いの幕開けを告げる。


表現の自由」をめぐるテーマの深遠さと、
独特の軽くて甘いノリをうまくミックスした、このシリーズ特有の絶妙のマッチングは健在。
折しも、徳山工業高専で起きた殺人事件容疑者の実名を報じた、
新聞・雑誌の閲覧制限が議論を呼ぶ中、
こうした事態を予測したかのようなストーリーのタイムリーさも特筆すべきだろう。


いろいろ考えて読むもよし、とにかく楽しくよむもよし。
さらなる続編が読みたくてたまらなくなるような、一気読み必至の1冊。
9月29日発売の「レインツリーの国」に期待しつつ、次作を心待ちにすることにしたい。


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図書館内乱
図書館内乱
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.14
有川 浩著 / 徒花 スクモイラスト
メディアワークス (2006.9)
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