敷島シネポップで「マイアミ・バイス」

mike-cat2006-09-15



懐かしの…、と書くと年齢がバレるが、本当に懐かしい。
TVシリーズをきちんと観ていたわけでもないが、
そのイメージの記憶は、かなり強く脳裏にこびりついている。
そのTVシリーズで製作総指揮を務めたマイケル・マンが、
20年の歳月を経て、その思いをすべてつぎこんだ大作映画である。


主人公はマイアミ市警風俗課《マイアミ・バイス》の刑事、
ソニーコリン・ファレルとリコ=ジェイミー・フォックスのコンビ。
ある日、二人の使っていた情報屋が、FBI主導の潜入捜査を自殺を遂げる。
囮捜査の発覚で無残な死を遂げた潜入捜査官の代わりに指名されたのは、ソニーとリコ。
捜査情報の漏洩、そして巨大なドラッグ密輸を追い、二人の決死の囮捜査が始まった−


テレビでのドン・ジョンソン演じるソニーに特徴的だった、
ヴェルサーチフェラーリの雰囲気は、かなりの部分で健在といっていい。
ただ、あの時代独特のバブリーな感覚や、テレビ独特の軽さは消え、
よりディープで、よりダークな、夜のマイアミの街が印象的だ。
街の灯を一望するビルの屋上、夜の海を疾走するパワーボート
南米の山奥、そしてマイアミの湿地帯上空を駆けるリアジェット…
圧倒的な風景を、凝ったカメラワークでスタイリッシュに映し出す、その映像も素晴らしい。


ストーリー展開もシンプルそのものに進行していく。
あまりのひねりのなさには、ある意味で新鮮な驚きすら感じるが、
スピード感や映像のダイナミックさに焦点を絞った演出と思えば、そう悪くない。
実はマイケル・マンの映画って「ラスト・オブ・モヒカン」以外は、
あまり性に合わなかったのだが、この映画に関しては、むしろ好印象が強い。
リアル路線を標榜しながら、「そんなヤツおらんやろう」的なスーパー刑事が活躍する、
という何だかよくわからない矛盾も、さほど気にせず物語に入っていける。


囮捜査、といえば、ジョニー・デップ×アル・パチーノの「フェイク」が印象的だ。
危険な捜査でありながら、騙すことの哀しさ、切なさなんかもきちんと描かれていた。
それと比べると、全般に軽いような気もするが、
それはそれ、カッコよさに焦点を合わせたと考えれば、納得もいく。


ただ、あくまで好みの問題なのだろうが、
コリン・ファレルの暑苦しさが、全編を通じてどうにも気になったのも確か。
ただでさえ、臭ってくるほど男くささを前面に押し出した映画なのだ。
コリン・ファレルの濃すぎる風貌&演技が加わると、いささかトゥー・マッチじゃなかろうか。
抑えた演技のジェイミー・フォックスとの、
ホット&クールのコンビネーションもいいと思うのだが、いまいちミスマッチにも感じられる。
映画全体の切れ味が、ファレルの脂っこさでぼやけてしまったような気がするのだ。


ヒロイン役のコン・リーにも違和感は強い。
これも結局は好みの問題になってしまうかもしれないし、
あくまで演出の問題なのかも知れないが、何だか普通すぎるのだ。
巨大ドラッグ組織のナンバー2が、そんなにウブでいいの? と素直に疑問を感じる。
もっと匂い立つような危険な女性であってもよかったんじゃないか、という印象だ。
だから、コリン・ファレルコン・リーの燃える恋にも、いまいちノっていけないのだ。


全般的には、おもしろかった映画にカテゴライズされる作品だが、
コリン・ファレルにやや胸焼けした状態を考えてしまうと、
この二人が別のキャストだったら、と想像せずにはいられない。
もちろん、観る人によってはコリン・ファレル×コン・リーだからこそよかった、
という人もいるだろうから、そこらへんはあくまで個人的な評価ではあるのだが…