うなぎ雪辱戦@北浜「阿み彦」


不愉快そのものだった黒門「川ひろ」を忘れ、
土用の丑にはやや遅れ気味のうなぎ雪辱戦に臨む。
あんな店のせいで、鰻食べ損なうなんて、それこそ損失だ。


きょうの「阿み彦」は、勤務先のある北浜のお店。
堺筋土佐堀通りの交差点、大阪証券会館の地下1階だ。
ちなみ「ポンテ・ベッキオ」なんかが入っている証券ビルとははす向かい。
創業350余年、寛永年間からという関西流の老舗だが、
どよんとしたビルの地下に、どよんとした感じで店がある。
率直にいうと、お店の見た目はかなり冴えない、といっていい。


まだ夕方5時すぎ、ということもあって店内にも活気はない。
しかし、対応は非常に真っ当だ。
まあ東京では当たり前のことだが、大阪では正直いってやや貴重。
大阪の人にはごめんなさいだが、経験上そう言わざるを得ない。


うざくに白焼き、う巻きと鰻丼と、鰻尽くし(とまではいかないが)の注文。
ひなびた印象の座敷では、まったりとした時間が過ぎていく。
外の暑さをようやく忘れ、心地よい気分になった頃、うざくと白焼きが登場する。

白焼きはわさび醤油ではなく、わさびと温かいつゆでいただく。
おつゆで白焼きは、初体験だったのだが、これはなかなかいい。
ともすれば、醤油とわさびに負けてしまうところが、バランスよく味わえる。
もちろん、パリッとした表面の焼き加減にも、思わず頬がほころぶ。
想像していたより、ずっとふわっとした食感に、舌がとろけていく。
うざくは煮こごりで寄せてあるのと、オーソドックスなのが半分ずつ。
爽やかさと濃厚さの混じり合う感触に、
舌鼓を打ちつつ、白焼きと順番に頬張っていく。


続いてうまきが登場。ちなみに写真は半人前。

2人でひとつしか頼んでいなかったのだが、
きちんと切って二つの皿に取り分けて盛ってきてくれる。お気遣いに感謝。
こちらのお味は、比較的オーソドックスな印象だろうか。
ただ、オーソドックスはオーソドックスでも、お味は確か。
だし巻きの加減も絶妙で、気付いたらあっという間に皿が片付いていく。


さて、いよいよ鰻丼だ。肝吸いと香の物付。

おいちい。蒸しの工程が入らない関西風は、
気持ち固いんじゃないか、という勝手な想像を見事に裏切ってくれる。
表面は少しパリッとして、中はふわふわ、かといってしつこくない。
ある意味では、関東流よりも鰻らしい鰻、という気がする。
タレもベタベタした感じではなく、比較的さらりとした印象。
量は決して少なくないのに、気付いたら丼は空っぽになっていた。


食べているうちに、最初感じた活気のなさも、気にならなくなる。
むしろ、そのどよんとした雰囲気が、
鰻独特の背徳感(そんなのないかな…)とマッチしているようにも思えてくる。
もちろん、これをもって最高の鰻というわけにはいかないが、
普段着プラスαぐらいとしては、十分満足できるレベル。
満足感を胸に、地上の灼熱地獄も何のその、で家路に着いたのだった。