千日前国際劇場で「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」

mike-cat2006-07-27



ジョニー・デップの怪演で大ヒットした前作を受け、
いつの間にかトリロジーとなっていたシリーズ第2作。
気付いてみれば、この夏いちばんのイベント映画になっていた。
平日の午後一番、拡大ロードショーもされているのに、
劇場はなかなかの混みようとあって、そのヒット具合がよくわかる。


前作でジャック・スパロウ船長=ジョニー・デップとの大冒険を終えた、
鍛冶屋のウィル・ターナーオーランド・ブルームと、
総督の娘エリザベス・スワン=キーラ・ナイトレイが、
待望の結婚式に臨むその当日、事件は起こった。
東インド会社の幹部ベケット卿の企みで、二人は投獄されてしまう。
途方に暮れるウィルに、ベケット卿はある取引を申し出る。
一方、呪われた海賊バルボッサから、
ブラックパール号を取り戻したジャック・スパロウのもとには、
海賊に沈められたウィルの父、ブーツストラップ・ビルが訪れる。
幽霊船「フライング・ダッチマン」デイビィ・ジョーンズとの、
血の契約が時間切れになった、と告げるビル。
3人の運命が、とてつもない大嵐に巻き込まれていく−。


〝さらば、ジャック・スパロウ〟のキャッチフレーズ、
そして、トリロジーの中編という事実が示す通り、この作品は、
位置付けとしては、パイレーツ・オブ・カリビアン版「帝国の逆襲」だ。
ジャックの身にとんでもないことが起こって…、
という、風呂敷を広げるだけ広げておいて、「つづく」のラスト。
あとは来年5月の完結編に向けて、DVDも買ってね、というシナリオだ。
次がある、ということを承知せずに観た客は、さぞや愕然とするだろう。
スター・ウォーズほど、トリロジーであることが、
周知されていないから、そんな人も決して少なくないはずだ。


映画のクオリティは、そう悪くない。
むしろイベント・ムービーとしては上出来の部類だろう。
前作ほどの新鮮味はないが、
デップ演じるスパロウのコミカルさは、やはり観ているだけで笑ってしまうし、
ひねりの効いた小気味のいいアクションも健在だ。
キーラ・ナイトレイアゴはますますしゃくり上がっているが、
それはそれで魅力のひとつと考えれば、あばたもえくぼというものだ。
オーランド・ブルームも、やはりこういうコスチュームが似合う。
女性ファンならずとも、何となくグッとくるものがあったりする。


この微妙な三角関係を醸し出す3人に加え、
未来世紀ブラジル」のジョナサン・プライス
奇跡の海」のステラン・スカルスガルド
ラブ・アクチュアリー」「銀河ヒッチハイク・ガイド」のビル・ナイと、
存在感抜群のメンバーが揃い、映画の質感もなかなかのもの。
絶海の孤島の食人族に、伝説の怪物クラーケン、
幽霊船の個性的な乗組員たちも凝っていて楽しいし、
うれしいというか、何とも言えないサプライズも準備されている。


ストーリーがバカバカしい、という考え方もあるだろう。
だが、すべては元ネタでもある、ディズニーランドのアトラクションと同じだ。
楽しむスタンスでその世界に浸れば、文句なしに楽しいし、
懐疑的なスタンスで「ケッ!」とやってれば、すべてがバカバカしい。
各論はともかく、このテの映画そのものの是非を問うなら、
始めから観ない方が賢明だし、わざわざ批判するのもおかしい。
素直に楽しむか、観なければいいだけの話なのだ。


ただ、やはり151分は長すぎる。
挙げ句に「つづく」では、観終わってあくびが止まらないも仕方がない。
激しい動きのアトラクションは、短いからこそ楽しいのであって、
それが延々と続いてしまっては、刺激に慣れて退屈にもなる。
心地よい疲労感を越え、徒労感になるほど、
内容を詰め込みすぎたのは、正直判断ミスだと言わざるを得ない。
前作も決して短くなかったが、ここまでパンパンな内容ではなかった。
ノンストップでアクションを連ねるのなら、100分少々が限界だろう。


まあ、そんな部分での不満を残しつつも、
完結編にはついつい期待をさせられてしまうのも確かだ。
今回のラストの帳尻合わせは、何となく想像できるが、
それでもワクワクしてしまう自分が、間違いなくいる。
単純に「面白い」「つまらない」と訊かれれば、「面白い」と答えたい。
もちろん、完結編は次作で、上映時間は長いことも言い添えるのだが…