米沢穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)」

mike-cat2006-06-26



春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)」に続くシリーズ第2弾。
〝緊張の夏、小市民の夏。波乱と驚愕の夏休み!〟
〝小市民を目指す小鳩君の、苦悩と甘いものと推理の日々〟


平穏無事な毎日を送るべく、小市民を目指す小鳩君の夏。
それは恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある、
小佐内さんとのスイーツめぐりに明け暮れる毎日だった。
だが、そんな小鳩君を世間は放っておいてくれない。
消えたシャルロット、残された謎の記号、誘拐、そして互恵関係の危機…
<小佐内スイーツセレクション・夏>に隠された巧妙な陰謀。
甘くて苦い、夏期限定トロピカル・カフェに小鳩君のこころは揺れる−


「まるで綿菓子のよう」で小佐内さんが見せた笑顔で、物語は幕を開ける。
夏休みの素敵な予感。
「わたしね。何だか、素敵な予感がしてるの!」
そして、軽妙な「シャルロットだけはぼくのもの」で展開される、
小鳩君と小佐内さんの丁々発止の知恵比べ…


だが、物語は後半、意外な展開を見せる。
日常ミステリの枠をはるかに越えた、大事件。
そして迎える、あまりにダークな互恵関係の危機…
そう、これは「小市民」シリーズの「帝国の逆襲」なのだ。
ミステリーの仕掛けも巧妙になった第2弾は、
想像以上のパワーで読む者を物語の中に引きずり込んでいく。


ディテールに味わいが感じられた1作目と比べ、
事件の大小ではない次元で、しっかりとしたプロットも加わってパワーアップした印象だ。
そして、1作目からこだわり続けた「小市民」としてのアイデンティティにも危機が訪れる。
まるでライフカードオダギリジョーのコマーシャルみたいに(例がよくないな…)、
「つづく!」みたいな終わり方に唖然としつつも、その完成度の高さにうっとりとするのだ。


続編、はたしていつ出るんだろうか。
これはこころして待つしかない。
というか、未読の人は次が出るまで待つのが得策?
いろいろと考え、身をよじりながら本を閉じるのだった。


Amazon.co.jp夏期限定トロピカルパフェ事件