カーステン・ストラウド「コブラヴィル 上 (文春文庫)」「コブラヴィル 下 (文春文庫)」

mike-cat2006-06-18



夜10時、大阪に戻る新幹線。
日本−クロアチアをよそに読みふける。
いや、ちょっと気にはしてたけど…


イスラム・ゲリラ、そして国連平和維持軍も敵だ!〟
〝フィリピンのジャングルに潜入したCIAチームは
 本国での陰謀にあやつられていた…〟


ペンシルヴァニア州選出の民主党上院議員
ドルー・ランガンに寄せられた、ある機密文書で物語は幕を開ける。
国家安全保障局<NSA>のアンブラ級VRX(高度機密情報)は、
フィリピンで計画されているらしい、アルカイダのテロ作戦。
その頃、ミンダナオ島にはドルーの息子でCIA工作員のコールが潜入していた−。
政府、NSAにCIA、そして国連平和維持軍、アルカイダが絡み合う、巨大な陰謀。
その影に隠れる裏切り者は誰なのか−、ランガン父子の戦いが始まる−。


NYを舞台に、裏切りと欲望、義理と友情、そして
いくつもの捜査機関の思惑が絡み合う傑作サスペンス
ブラックウォーター・トランジット (文春文庫)」の作者による、ノンストップ・アクションスリラーだ。

ブラックウォーター・トランジット (文春文庫)

ブラックウォーター・トランジット (文春文庫)


今回の舞台は、ワシントンDCの裏側、そしてミンダナオ島のジャングル。
ゲリラと工作員、政府高官と上院議員などが絡み合い、
スパイ小説と戦争小説のジャンルミックス的なスピード感満点のスリラーを展開する。
〝悪魔に魅入られた国を、共和党が理想と考える秩序正しい国〟に変えるため、
70カ所以上の国に軍を派遣し、駐留させるアメリカ軍、
そして慢性〝介入病〟に陥った国連がはまった泥沼と混沌の世界。
ランガン父子〝戦い〟は、正義の行方すら見失いながら迷走していく。
ランガン上院議員の側にも、工作員コールの側にも潜む、
裏切り者の存在も、スパイ小説ならではの緊迫感を与え、スリルと興奮をもたらしてくれる。


海外もののサスペンスの他に漏れず、
登場人物がやたらと多いので、「ええっとこの人は…」となることもあるが、
複雑なプロットにもかかわらず、物語は序盤からスピード全開だ。
ストーリーラインの仕掛けはややシンプルだが、
ちょっとしたお色気に、人間ドラマ、そして政治的な動きなどなど、読ませる部分は多い。
そして最後に浮かび上がる、意外な真実−。
味わい深い、まではいかないが、なかなかの余韻を残してくれる。
傑作「ブラックウォーター〜」には及ばないが、
このテのお好きなヒトには、間違いなくお勧めできる、〝いい感じ〟の1冊だ。


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