畠中恵「うそうそ しゃばけシリーズ 5」

mike-cat2006-06-02



おなじみ「しゃばけ」シリーズの最新作。
〝若だんな、旅に出る!〟
ということで、あの病弱な若だんなが寝床を離れ、
はるか箱根へ湯治に向かう、というお話だ。


日本橋の回船問屋兼薬種問屋の、日本一病弱な若だんな、一太郎は、
寝込むだけでなく、ある日の地震で落ちてきた籠に頭をぶつけ、けがまで負ってしまう。
相次ぐ地震と不思議な夢に導かれるように、
箱根での湯治に向かうことになった若だんなだが、
気付くと、妖の兄や佐吉も仁吉も姿がなくなり、箱根ではなぜか若だんながお尋ね者に…


シリーズ第5弾にもなると、やはりいくら病弱でも舞台を変えるのがやはり定石と言うことか。
そういえば、ジェフリー・ディーヴァーリンカーン・ライムシリーズでも、第3弾「エンプティー・チェア」では、ノースカロライナに出向いたっけな、などと思い出す。


だが、今回はそれだけじゃない。
いつもは大活躍の大妖、佐助や仁吉が活躍する場面がとても少ない。
「きゅわきゅわ」「ぎゅわぎゅわ」と楽しい、かわいい鳴家(やなり)は、
にぎやかに登場してくるのだが、それはまあ毎度まいどであくまでにぎやかし。

いつもはとんち勝負、の若だんなが、体を張って(だいじょぶ?)困難に立ち向かう。
そして、それが今回の大きなテーマともなっているのだ。


自分は何かの役に立っているんだろうか。
つねに寝床に張りつけられ、甘やかされ、両親と兄やたちの加護のもとで生きる毎日。
その悩みを常に胸に抱えつつ、生きてきた若だんなが、大きく一歩を踏み出す。
苦しいのは自分だけじゃない。誰もが己の思いを持て余している。
それに気付いたとき、若だんなはあらためて自分と向き合い、成長を遂げるのだ。


話の盛り上がりとしては、シリーズものならではの安定感とマンネリズムで、
夢中になるほどでもないが、それなりには楽しく読めるかな、という感じ。
少なくとも、〝次〟が出たら、間違いなく読む程度には面白い。
次はもっと大きな仕掛けで攻めてくるのか、
それともあえてマンネリの中で面白さを追求してくるのか。
まずは楽しみにして待ちたいな、ということで、感想も無難にまとめるのだった。

Amazon.co.jpうそうそ


http://ping.bk1.co.jp/tb.cgi/02680004