梅田OS劇場で「アサルト13 要塞警察」

mike-cat2006-02-22



「アサルト13」、適当っぽいけど、意外にいいタイトルかも知れない。
原題は〝ASSAULT ON PRECINCT 13〟
つまり13分署襲撃、なのだが、あんまり率直に訳しても面白くない。
アサルト13では全然意味が通らないけど、聞こえがいい気はしないでもない。
要塞警察」だけだと、どうにもアナクロっぽい気がしてならないし…
ちなみに、ウエスタンの傑作「リオ・ブラボー」のオマージュとして捧げられた、
ジョン・カーペンターのカルト作品(劇場未公開)「ジョー・カーペンターの要塞警察」の、
さらにリメイクという、いかにもB級作品っぽい来歴の作品だ。


舞台は吹雪に見舞われたニューイヤーズ・イブのデトロイト
新設の21分署への合併のため、この日を限りに閉鎖される13分署。
おとり捜査の失敗で同僚を失ったトラウマで、
内勤に入った警官ジェイク・ローニック=イーサン・ホークは、
精神分析医のセラピーと鎮静剤の、憂鬱な大みそかを迎えていた。
警官殺しで逮捕され、移送中の暗黒街の大立者ビショップ=ローレンス・フィッシュバーンが、
大雪の影響で急遽護送され、一時署内で待機することになったのがことのきっかけ。
ビショップを狙う〝ある勢力〟が、13分署を襲撃する。
スナイパーに特殊部隊を投入する敵に対し、13分署はわずかな警官のみ。
窮地に陥ったローニックは、ビショップら犯罪者と手を組み、対抗する手段に出た−。


ストーリーそのものは、まあ予告で観た通り。
だが、テンポのよさと骨太のストーリー展開で、なかなか魅せる作品だったりする。
こころに傷を抱えた警官ローニックと、存在感たっぷりのギャング、ビショップの
一時的に手は組んでも、決してこころは許さない。
ひしひしと緊張感が伝わるバディ・ムービーっぽさもまた、味わいを醸し出す。
監督はフランス出身のジャン=フランソワ・リシェ
次回作にはヴァンサン・カッセルアラン・ドロン
〝Ennemi public n° 1, L'〟(パブリック・エネミーNo.1)が控える新鋭だ。
脚本はケヴィン・スペイシーサミュエル・L・ジャクソンの「交渉人」のジェームズ・デモナコ
ホークの微妙なひ弱さと粗暴さ、フィッシュバーンの貫録をうまく生かしている。
微妙にローレンス・フィッシュバーンが、
マトリックス」のモーフィアスよろしく、超人っぽ過ぎて困ってしまうが、
まあ、それもこの役者の味といえば味だろうから、よしとしておく。


評価が分かれるのは、渋いけど、なかなか豪華な脇役陣だろう。
定年間近の老警官ブライアン・デネヒー(「ランボー」)、
お色気ムンムンの警察署秘書ドレア・ド・マッテオ(「ソプラノズ」)あたりはまだいい。
ユージュアル・サスペクツ」の栄光はどこへやら、
近年はちょっと安っぽい演技も目立つガブリエル・バーンなんかは、
いいかげん、もう同じような役柄ばかりやるのはどうなのよ、という感じだし、
ヘンなジャンキーをやたらと存在感たっぷりに演じるジョン・レグイザモも、
序盤で散々煽ったあげくに、結局は使い余している印象の方が、むしろ強い。
クローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で注目のマリア・ベロ
ラッパーの〝ジャ・ルール〟あたりも、別にいなくてもいいような中途半端さ。


よくいえば、贅沢な使い方、といえばそうなのだが、
ここらへんにクレジットされた俳優目当てに行くと、かなり肩透かしを喰らう。
まあ、その肩透かし感も、予定調和に終わりがちなストーリーに、
意外性というある種のスパイスを加えている、とも言えるのだが…


観終わっての率直な感想としては、
いい意味でも悪い意味でもB級作品としての予想を裏切らなかった、という感じ。
全然ほめてないように聞こえるけど、
あまり期待せずに観に行けば、けっこう楽しめる、という基準値以上の作品だ。
少なくとも、ホークかフィッシュバーンのファンなら、観て損はないはず。
雑誌「映画秘宝」によれば、ガンマニアにもたまらない作品らしい。
DVDでも構わないだろうけど、せっかくだったらスクリーンの迫力で観て欲しいな、と、
何だかまとまりのないレビューに終始してしまうのだった。