ひさびさの大阪グルメ♪

mike-cat2006-02-16

法善寺横丁の串揚げ「Wasabi」に行ってみる。


法善寺横丁の中ほどの、しっとりとした佇まいのお店。
のれんをくぐると、女性店主から丁寧なごあいさつをいただく。
大阪のお店というと押し出しが強すぎたり、ヘンに手慣れすぎていたり、
と、ちょっともアクの強い店も多い印象が強いけど、
ここは十分東京でも通用する接客レベルだと思う。
関西ならでは、の雰囲気と、スタンダード性を兼ね合わせたお店になっている。
コースは2種類で、満腹になったらストップのおまかせか、12本のおすすめ。
もちろん、欠食児童としては、迷わずおまかせに決定する。


まずテーブルに並ぶのは、
口直し用の野菜(串に刺したにんじん、大根、プチトマト)と定番のキャベツ。
グラスに盛りつけられた野菜が、まずは目を楽しませてくれる。
これまた口直し用に軽くぽん酢を溶いた大根おろしもプラスされ、何だかうれしい。
ツケダレは醤油ベース、軽めのソース、フランス産の塩に、からすみ塩。
それぞれの串におすすめを教えてくれるが、ほとんどが塩だけでイケるかも。
で、最初に出てくるのが、帆立の貝柱ベースの和風クラムチャウダー
ホクホクのジャガイモと、あさり、貝柱の舌触りも官能的な、うれしい一品だ。
温度は熱すぎず、温すぎず。空腹の胃にも優しく染みとおってくる。


お待ちかねの1本目の串は、季節の吹き寄せだ。
ぎんなん、ナツメ、えびとカシューナッツ、かずのこ…
微妙に季節がズレているような気もしないではないが、お味はいい。
もちろん衣も、サラッとはたいた感じで、具の食感とマッチしている。
よくあるべっちょりした串揚げとは、一線も二線も画した印象だ。


続いては三つ葉の鱚巻き。
軽く巻いた鱚の中に、三つ葉が爽やかに香る。
いきなり一気に頬張ると、口の中で熱気がスパークするが、それもまた一興。
はふはふと熱さを逃がしながら、いい感じに脂の乗った鱚を味わう。


お次は鯛の腹子だ。
この食材、たまにさっとダシで炊き上げたりはするが、串揚げはもちろん初めて。
こちらも衣とのバランス、熱の通り具合が絶妙だ。
熱が通り過ぎたら、あっという間にボソボソになる腹子を、
とてもジューシーに仕上げている。これ、絶品♪


続いては「カワチ蓮根です♪」
ほお、河内産の蓮根ね、と思って口にすると、和からしが仕込んである。
えっ、これって「からし蓮根では?」と思うのだが、
となりの客にも「大阪のカワチ蓮根です」と、お店の人。
どうやら、河内産蓮根のからし蓮根らしい。ようやく納得する。
で、お味はもちろん、マイルドなからしが、優しく蓮根の味を引き立てる。
熊本独特の、鼻をガツーンと殴られるような鮮烈さはないが、これはこれでいい感じだ。


筍は、若芽の柔らかいトコを、軽く一塩が心地よい。
すこし刃を入れ、木の芽を刻み込み、と、ひと手間もふた手間も加えている。
木の芽の風味は、筍の風味を殺さない程度に抑えられていて、好感が持てる味。
難をいえば、これはもう少しサイズがあっていいかも。
平たくいうと、もうちょっと食べたかった、というトコだ。
串揚げなのでしかたないのだが、
筍だったら、多少大きくても全体のボリューム感には大きな影響もないとは思うので…


サザエさんは、貝付で供される。
ギリギリのレアくらいで火が通ったサザエは、硬すぎず柔らかすぎずで、
コリコリとした歯触りと、衣のサクサクがいい感じで絡み合う。
あのサザエの味わいと、揚げ油の風味がこういう感じでマッチするとは思わなんだ。
肝のトコもつけてくれたらよかったのだが、これはまあ好みもあるのでしかたない。


帆立の貝柱は、タプナードソースが添えられる。
噛みしめると、貝柱のお汁と、オリーブとアンチョビの風味が混ざり合い、
何ともいえない味わいが口の中に広がる。


マッシュルームは油との相性を考え、ごくシンプルに供される。
口の中にジュッと溶け込む味わいに、舌をヤケドしそうなことすら忘れてしまう。
これは思わず、家でも真似したくなるけど、やっぱり火加減は難しいんだろうと思う。
どこまで油が回ってもいいのか、微妙なタイミングで揚げないといけない。


続いてシラウオ
これもまた淡泊な味わいと、衣のバランスがたまらない。
熱の通り具合がこれまた絶妙で、
身はふわっとして口でとろけるし、シラウオの風味もいい感じで鼻をくすぐってくる。


お次はちょっといい感じにゲスな味。
牛肉で巻いたニンニクの茎だ。
といっても、ニンニクはあまり強すぎず、軽く香る程度。
一品だけで見ると、微妙にパンチ不足の感はあるが、
全体のコースのバランスを考えると、これは正解だと思う。


「インカの目覚めです♪」と供されたのはジャガイモ。
なるほど、アンデス原産だからね、なんて思いながら頬張ると、思いのほか甘みが強い。
きたあかりを思わせる、黄色い色も印象的なお芋に、
イクラとホイップバターが添えられて、ホクホクと口を楽しませてくれる。


濃い味わいが特徴的な地鶏には、これまたカレー風味で対抗する。
噛みしめるとふたつの味わいが絶妙の組み合わせで舌を刺激する。
これもまたもうひと串欲しくなる、クセになる味だ。


鱈の白子は、濃厚な味わいが口の中に広がる。
これは、羊の脳味噌とか、フグの白子でもお馴染みの定番の味だが、
クセがなく万人向け、ということで、鱈のチョイスが無難だろう。
個人的には羊の脳味噌が一番好きなのだが、仕入れの問題もあるしね…


あなごと若ゴボウは、この日屈指の逸品だ。
ふわっと仕上がったアナゴと、風味高い若ゴボウの食感は、ナイスのひと言♪
軽く効かせた山椒も、風味を引き立てている。


続いては、湯葉豆腐の優しく繊細な味わい。
わさびとダシしょうゆで、さっぱりといただく。
わさびはちゃんと鮫皮おろしで、こまかくおろしてある。
当たり前と言えば当たり前だが、寿司屋でもちゃんとやらない店が多いんだ、これ。
この風味高いわさびがピリッと舌を刺激した後、
ふわふわとろとろと口の中に桃源郷が広がってしまうのだ。


クルマエビが出てくると、クライマックス感は高まる。
まあ、もう16品目だしね。よく食べるね、わたしたち…
定番の味だけど、プリプリの食感はさすが、という感じ。
エビフライ的なクリスピーさとは、ひと味違う〝カリ♪プリ♪〟感覚だ。


下仁田ネギは、中心に鶏を仕込んである。
ネギのとろりとした味わいに、鶏の脂が融け合い、力強いハーモニーを奏でる。
ネギ独特のクセも、いい感じにこなれていて、ネギが苦手な人にもお勧めのひと串だ。


ひとくちカツは、秋田のもも豚だ。
タスマニア産、というマスタードが、繊細な香りを醸し出す。
絶妙の火加減が肉汁の旨さを存分に味わわせてくれる。
脂だけではない、豚の赤身の味を楽しめる一品だ。


ベトナム風春巻きには、お馴染みスイートチリソースがかかる。
よくある甘すぎるチリソースではなく、
きちんと辛味の効いた味わいが、重くなりがちな串揚げを軽妙に仕上げている。


ウナキュウまで、串揚げになってしまうのには驚いた。
先ほどのアナゴ同様、ふんわりと仕上がった鰻と、
微妙に火が通ったキュウリのぽりぽり感が、
寿司屋で締めの巻き物をいただいているようで、何だか楽しい。


最後の締めには伊賀牛をいただく。
レアに火が通ったひとくちサイズのお肉に、わさびとダシしょうゆ。
この満足感♪ ああ、たまらない…と、しばしうっとりさせられる。


メニューには稲庭うどんとお茶漬け、というのもあるのだが、
きょうのところはこの辺で勘弁しておくことにする。
by めだかだ。にゃおん♪
デザートにはイチゴのスープ仕立て。爽やかな酸味が、油に慣れた舌を洗い流す。


フレンチの技法を交えつつ、和の素材にこだわった串揚げは、
20串近く食べても、胃もたれとはまったく無縁なままだ。
天ぷらをお好みで野菜中心で食べたとしても、なかなかこうはいかない。
やはり、揚げ加減の絶妙さが、揚げ物独特の重さを感じさせない秘訣だろう。
あのもったり感も、大阪の味・串揚げの特徴だろうから、
この店をして、串揚げの王道・本道という言い方は難しいかもしれない。
しかし、変わり串揚げ、創作串揚げ、と言う軽々しい表現は決して似つかわしくない。
そこには、串揚げのひとつのスタイルとして、確立された旨さがある。


ひとつ注文をつけるなら、デザートが少し弱い気はする。
これまた平たく言うと、分量が少ないのだ。
大根おろし、野菜スティックなどでバランスは取れてるとはいえ、
総体的な充足感を完成させるには、もう少しデザートにボリュームが欲しいな、と。
結局もうちょっと…、の気持ちはなんばウォークの台湾スイーツ「冰館」にてまぎらわす。
練乳を仕込んだ氷をかき氷に仕立てる雪綿氷をマンゴーソースで、ね。
実際、「Wasabi」でこれを出されたら、ちょいとねっとり感が強すぎるのだが…