井上夢人「the TEAM」

mike-cat2006-01-30



きょうから石垣島出張、なのだが、
窓からの景色を見るのもそこそこに、飛行機の中で読みふける。
題材としては、けっこう微妙なのだ。
何しろ、インチキ霊能力者、だったりする。
細木数子が大嫌い!! なのに、何で買ってしまったのか。
答え:買ったときは気づかなかった。(←バカ)
ちなみに、なんばの外れには〝太木数子〟という占い師がいる。
あくまで、余談だが…


だが、そんなイヤなことを忘れることができるくらい、この本は読ませる。
読み終えて、グッと感慨が残るみたいなことはないが、
サラッと読み進められる軽妙さ、みたいなのがいい。
岡島二人時代も含め、初めて読んだのだが、
これからちょっと読み込んでみたい作家である。(いまさら? かも)


小説すばる不定期連載された「霊導師あや子」シリーズだ。
テレビでも番組を持つ、盲目の霊能力者能城あや子。
招霊木(オガタマノキ)を手に、顔には黒いサングラス。
たぐいまれな霊視能力で、相談者の悩みだけでなく、数々の事件も解決する。
だが、その能力は真っ赤なニセモノ。
あや子の霊視を支えているのは、
探偵やハッカーなどで構成されたスペシャルチームだった。


物語の視点としては、霊視に対して、
ある意味距離を置いた立場から描こうという部分はうかがえる。
霊視能力をまったくのインチキとして描く一方で、
そのインチキに携わる人間が、欲に駆られた俗物でもない。
かといって、霊視の側にべったりかと思えば、
そのインチキを暴こうとするジャーナリストも、さほど邪悪に描かない。
むしろその視点は、僕のように懐疑的な人間からは、心地よい響きにも聞こえる。
一方で、物語の最後に語られる
「その霊視で、いったい誰が被害者になったの?」というメッセージは、
現実を考えると微妙に引っかかる部分もあるが、
この霊視チームに関してだけいえば、その理屈は間違っていない。
細木数子みたいなのが跋扈するいま現在では、
かなり問題もある作品ともいえるが、
時期的な問題を抜きにすれば、まずまずフラットな立場といっていい。


能城あや子のチームの〝霊視〟が事件を次々に解決するだけでなく、
霊視能力の秘密を暴こうとするジャーナリストや、かつての〝仲間〟など、
チームを脅かす存在が次々と現れるのも、なかなか面白い展開だ。
あくまでエンタテイメントとして読む限り(このフレーズ、数日前にも使った気が…)
かなりウェルメイドな作品に仕上がっていると思う。


ただ、ひとつ疑問点。
これだけの調査能力があるチームであれば、
何も〝霊視〟などという演出を用いなくても、十分やっていけるのでは、ということ。
もちろん、綿密な調査には莫大な経費がかかるし、
それを納得させるためにも、そういう演出が必要なこともわかる。
実際、番組以外の霊視では、
(このテのものにしては)良心的な価格設定もしているから、
演出は演出として割り切って、世の役に立とう、という部分もあるのだろう。
まあ、第一この〝演出〟がなかったら、小説にならないので、
こんなことを考えてもしかたないのではあるが、ちょっと思ってしまったのだった…


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